体験記

【認知行動療法㉑・最終回】認知再構成法のカウンセリングで学んだこと

2026年5月21日

これまで、私がパニック障害の認知行動療法に取り組んできた過程を、シリーズとして書いてきました。

最初は各駅停車から始まりました。

そこから、

快速電車

新幹線

飛行機

そして沖縄出張

一度は、そこまでできるようになりました。

ところが、その後に飛行機を回避したことをきっかけに、再び電車に乗ることが難しくなりました。

10年ぶりにカウンセリングを再開し、もう一度、各駅停車からトレーニングをやり直しました。

呼吸法を使い、ツボ押しも試しました。

その過程で、私はもう一つ大切なことを学びました。

それが、

「出来事そのものだけでなく、その出来事をどう考えるかによって、不安の感じ方が変わる」

ということです。

今回は、認知再構成法のカウンセリングを通して、私自身が学んだことを書きます。

認知再構成法とは

認知再構成法では、自分が不安を感じた場面について、

「そのとき、何を考えていたのか」

を整理していきます。

例えば、電車に乗っているときに不安を感じたとします。

そのとき、

「電車の中で具合が悪くなったらどうしよう」

「途中で降りられなかったらどうしよう」

「このまま不安が強くなったらどうしよう」

など、さまざまな考えが浮かびます。

私は以前、こうした考えを、

「不安になるのだから仕方がない」

と思っていました。

しかし、カウンセリングで一つずつ整理してみると、考え方そのものが不安を大きくしている場合があることに気づきました。

「不安になるかもしれない」が「きっと不安になる」に変わっていた

私の場合、特に問題だったのが、

「かもしれない」

という考えでした。

例えば、

「電車の中で不安になるかもしれない」

というのは、可能性について考えているだけです。

ところが、頭の中ではいつの間にか、

「電車に乗ったら不安になる」

に変わっていました。

さらに、

「不安になったら困る」

「困ったら電車から降りられない」

「降りられなかったら大変なことになる」

と、次々に先のことを考えてしまいます。

一つの「かもしれない」から、いくつもの不安が連鎖していました。

私が無意識に作っていた「最悪のシナリオ」

例えば、電車に乗る前に、

「駅間10分か……」

と考えます。

そこから、

「途中で不安になったらどうしよう」

↓

「不安が強くなったらどうしよう」

↓

「降りたくなったらどうしよう」

↓

「でも次の駅まで降りられない」

↓

「パニックになったらどうしよう」

と考えていました。

さらに、

「周りの人に迷惑をかけるかもしれない」

「恥ずかしい思いをするかもしれない」

など、どんどん先へ進んでいきます。

まだ何も起きていません。

それなのに、頭の中ではすでに大変な出来事が起きている。

これが、私の不安を大きくしていました。

「今、実際に起きていること」と「頭の中で考えていること」を分ける

カウンセリングで教えてもらったことで、私が特に意識するようになったのが、

「事実」と「考え」を分けること

でした。

例えば、

「電車に乗っている」

これは事実です。

「次の駅まで10分ある」

これも事実です。

しかし、

「10分の間にパニックになるかもしれない」

これは未来についての予測です。

さらに、

「パニックになったら大変なことになる」

これは、その先についての自分の解釈です。

以前の私は、これらを全部ひとまとめにしていました。

だから、

「駅間10分=危険」

のように感じてしまっていたのだと思います。

「考えたこと」は「起きたこと」ではない

これは、今回のカウンセリングで私が得た大きな気づきでした。

頭の中に、

「こうなったらどうしよう」

という考えが浮かんでも、

それはまだ起きていません。

当たり前のことなのですが、当時の私には意外と難しいことでした。

例えば、

「電車の中で不安になるかもしれない」

と考えたとします。

そこで、

「そうかもしれない。でも、今はまだ何も起きていない」

と考え直す。

それだけでも、私の場合は少し違いました。

「不安にならないようにする」ことにも問題があった

もう一つ気づいたことがあります。

私は以前、

「不安にならないようにしなければならない」

と考えていました。

電車に乗ったら不安にならない。

不安になったら呼吸法で消す。

それでも不安なら、さらに別の方法を使う。

そうしているうちに、

「不安になった」

という事実そのものを、失敗のように考えるようになっていました。

しかし、認知行動療法を続ける中で、

不安が出ることと、行動できないことは別

だと考えるようになりました。

不安があっても、そのまま電車に乗っていられる。

不安があっても、次の駅まで待てる。

それなら、それも一つの前進です。

「不安をなくす」から「不安があっても行動する」へ

これは、今回のシリーズ全体を通して、私が一番大きく変わったところかもしれません。

最初の頃は、

「不安をなくしたい」

と思っていました。

だから、不安を感じると、

「まだ治っていない」

「やっぱりダメだ」

と考えていました。

でも、何度も挑戦するうちに、

「不安があっても行動できればいい」

と考えるようになりました。

実際、私が新幹線や飛行機に乗れたときも、不安がゼロだったわけではありません。

それでも乗ることができました。

失敗した経験も、今では意味があったと思える

今回のシリーズでは、成功した経験だけではなく、失敗した経験も書きました。

30分ノンストップの特急に乗れなかったこと。

新幹線ひかりで途中下車したこと。

飛行機を回避したこと。

その後、電車にも乗れなくなったこと。

当時は、

「また失敗した」

としか考えられませんでした。

しかし、今振り返ると、それらの経験があったからこそ、自分がどんなときに不安を大きくしてしまうのかを知ることができました。

そして、

「回避すると、その瞬間は楽になる」

ということも経験しました。

これは、実際に自分で経験しなければ分からなかったことです。

「一度できたのだから、ずっとできる」とは限らなかった

私は一度、飛行機に乗れるようになりました。

沖縄にも行きました。

そのときは、

「これでもう大丈夫」

と思っていました。

ところが、その後に再び難しくなりました。

この経験から、

「できるようになった=二度と難しくならない」

とは限らないと知りました。

少なくとも私の場合はそうでした。

だから、再び難しくなったこと自体を、

「全部失敗した」

と考えなくてもいい。

必要なら、もう一度小さなところから始めればいい。

そう考えられるようになりました。

認知行動療法は「一直線」ではなかった

私の認知行動療法を振り返ると、一直線ではありません。

各駅停車から始まり、

快速電車

新幹線

飛行機

沖縄出張

そこまで進んだあと、再び電車に乗れなくなりました。

そして今度は、

各駅停車からやり直しました。

最初にこの経過だけを見たら、

「遠回りだった」

と思うかもしれません。

でも、私は今ではそうは思っていません。

遠回りしたからこそ分かったこと

最初のトレーニングでは、

「どうすれば電車に乗れるようになるか」

を考えていました。

二度目のトレーニングでは、それに加えて、

「なぜ私は不安を大きくしてしまうのか」

を考えるようになりました。

その違いは大きかったと思います。

呼吸法を使う。

ツボ押しを使う。

五感に意識を向ける。

そして、

自分の考え方を見直す。

これらを組み合わせることで、以前よりも自分の状態を客観的に見ることができるようになりました。

私が今でも意識していること

今でも、不安になることはあります。

だから私は、

「もう不安にならない」

とは考えていません。

代わりに、

「今、自分は何を考えているのだろう」

と一度立ち止まるようにしています。

そして、

「これは事実なのか?」

「まだ起きていないことを予測していないか?」

「最悪のシナリオだけを考えていないか?」

と確認します。

それだけでも、頭の中で膨らんでいた不安が少し整理されることがあります。

このシリーズを通して伝えたかったこと

ここまで21回にわたって、私自身の経験を書いてきました。

もちろん、これは私一人の経験です。

同じパニック障害でも、症状や経過、合う方法は人によって違います。

それでも、もしこの記事を読んでいる人が、

「一度できるようになったのに、またできなくなってしまった」

と感じているなら、私は自分の経験から一つ伝えたいことがあります。

一度できたことが、できなくなったからといって、これまでの経験が全部なくなるわけではありません。

私自身、一度は飛行機に乗れなくなりました。

電車にも乗れなくなりました。

でも、そこからまた各駅停車に乗るところから始めることができました。

そして、その過程で新しいことを学びました。

おわりに|「できるようになる」だけがゴールではなかった

私にとって認知行動療法は、

「不安をなくすための方法」

だと思っていました。

でも、長い時間をかけて取り組んだ結果、少し違うものだと感じるようになりました。

不安があっても、

どう考えるか。

どう行動するか。

どんな方法を使うか。

そして、うまくいかなかったときに、どう立て直すか。

そうしたことを一つずつ学んでいく過程だったと思います。

飛行機に乗れるようになったことも大きな経験でした。

でも、

一度できなくなった後に、もう一度各駅停車からやり直した経験

も、私にとって同じくらい大きな意味があります。

「また元に戻ってしまった」と思ったときでも、

そこからもう一度始めることはできる。

そして、

「今、自分は何を考えているのか」

に気づくだけでも、次の行動を選びやすくなる。

それが、私が今回のカウンセリングと再トレーニングを通して学んだことです。

長く続いた私の認知行動療法の記録は、今回で一区切りにします。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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