各駅停車から始めた、私の乗車トレーニング。
快速電車、新幹線こだま、快速急行、快速特急、新幹線ひかり。
そして最後には、新幹線のぞみに乗り、新横浜から名古屋まで約1時間半の無停車区間も経験しました。
少しずつですが、「途中で降りられない」という不安の中でも行動できるようになってきました。
しかし、私にはまだ大きな課題が残っていました。
飛行機です。
今回は、パニック障害を発症して以来、実に11年ぶりとなる飛行機搭乗に挑戦したときの体験です。
飛行機は「新幹線の次」ではなかった
新幹線のぞみに乗れたことで、私はかなり自信を持つことができました。
約1時間半の無停車区間を経験したのですから、
「これなら飛行機もいけるかもしれない」
そんな気持ちも出てきました。
ところが、実際に飛行機について考えてみると、そう簡単ではありませんでした。
伊丹空港から羽田空港までは約1時間。
時間だけを比較すれば、新幹線の新横浜から名古屋までの約1時間半より短いくらいです。
それでも、私にとって飛行機はまったく別の存在でした。
なぜなら、飛行機には私が怖いと感じてきたものがいくつも重なっていたからです。
パニック発作を初めて経験した場所
狭い座席の中で自由に動けないこと
高い場所を飛ぶこと
途中で降りることができないこと
つまり、飛行機は私にとって、
「これまでの不安が一つに集まったような対象」
だったのです。
そのため、今回の挑戦は単純に「新幹線の次に飛行機」というものではありませんでした。
私にとっては、これまで避け続けてきたものに向き合う挑戦でした。
11年ぶりの飛行機
パニック障害を発症してから、私は飛行機に乗っていませんでした。
今回の搭乗は、実に11年ぶりです。
もちろん、出発が近づくにつれて不安は出てきました。
「本当に乗れるのだろうか」
「機内で発作が起きたらどうしよう」
そんな考えが頭に浮かびます。
一方で、これまでのトレーニングで経験してきたこともありました。
快速電車に乗れた。
新幹線にも乗れた。
途中で回避したこともあったけれど、再び挑戦できた。
そして、ついには新幹線のぞみにも乗ることができた。
今回の挑戦では、そうした過去の成功体験が自分を支える材料になりました。
今回は家族と一緒に乗ることにした
飛行機は、新幹線のように自分の都合で段階的なトレーニングをすることが難しい乗り物です。
例えば、
「今日は高度3,000mまで」
「今日は30分だけ飛ぶ」
というような練習はできません。
乗るなら、実際の飛行機に乗るしかありません。
そこで今回は、家族と一緒に乗ることにしました。
これまでの乗車トレーニングでも、妻に同行してもらうことで不安を和らげながら挑戦した経験があります。
今回も、一人で無理に挑戦するのではなく、家族と一緒に飛行機に乗ることにしました。
私にとっては、安心材料を一つ持った状態で本番に臨むという意味もありました。
当日の朝は、それほど不安ではなかった
当日は、まず大阪モノレールに乗って伊丹空港へ向かいました。
万博記念公園駅では、少し緊張していました。
ところが、大阪モノレールに乗ると、それほど不安はありません。
これまでの電車のトレーニングを考えれば、モノレールに乗ること自体は問題ありませんでした。
そして伊丹空港へ到着。
ここからが本番です。
ゲートの前では、
「本当に大丈夫だろうか」
という不安と、
「ここまで来たのだから、きっと乗れる」
という気持ちが交互に出てきました。
搭乗直前に、強い不安がやってきた
そして、搭乗時間が近づきました。
ここで、強い不安が出てきました。
それまで比較的落ち着いていたのに、いよいよ逃げられなくなると思った瞬間、緊張が高まったのです。
これは、これまでの電車のトレーニングでも経験してきたことでした。
ホームにいるときは大丈夫なのに、電車が到着すると急に怖くなる。
乗車直前になって、
「やっぱりやめようか」
という気持ちになる。
飛行機でも、同じようなことが起きました。
しかし、今回はここまで来ていました。
そして、私は一つの言葉を思い出しました。
「そこには何もない」
搭乗直前、私の頭に浮かんだのが、
「そこには何もない」
という言葉でした。
私にとって、この言葉は、
「飛行機の中に恐怖があるのではない。怖さを作り出しているのは、自分の頭の中にある予測やイメージなのだ」
という意味でした。
もちろん、飛行機に乗ることそのものが怖いと感じている以上、簡単に不安が消えるわけではありません。
それでも、この言葉を繰り返していると、私の場合は不安が少しずつ落ち着いていきました。
そして、
「ここまで来たのだから、乗ってみよう」
と気持ちを切り替えることができました。
いよいよ搭乗
そして、飛行機に乗りました。
11年ぶりの飛行機です。
座席に着いたときには、もちろん緊張感はありました。
しかし、実際に搭乗してみると、思っていたほどの強い不安はありませんでした。
そして離陸。
ここでも大きな問題は起こりませんでした。
むしろ、自分でも驚くほど落ち着いていました。
搭乗前にはあれだけ不安だったのに、
「あれ?普通に乗っていられる」
という感覚でした。
その後も大きな不安に襲われることなく、無事に羽田空港へ到着しました。
11年ぶりの飛行機は成功した
こうして、11年ぶりの飛行機搭乗は成功しました。
私にとって、これはかなり大きな出来事でした。
なぜなら、飛行機は単に「長時間乗る乗り物」ではなかったからです。
私の中では、
「パニック障害になってから乗れなくなった乗り物」
そのものだったからです。
それに再び乗ることができた。
しかも、搭乗後は比較的落ち着いて過ごすことができました。
これまで、
「飛行機に乗ったら発作が起きるかもしれない」
と考えていた自分にとって、この経験は大きな意味を持ちました。
今回の経験から分かったこと
今回の挑戦で私が感じたことはいくつかあります。
① 搭乗前の不安と、実際の機内の状態は違った
一番印象に残ったのはこれです。
搭乗前には、かなり不安になりました。
しかし、実際に乗ってみると、機内では比較的落ち着いて過ごすことができました。
私の場合、
「これから起こるかもしれないこと」を考えている時間のほうが、実際の搭乗より苦しかった
と感じました。
② 過去の成功体験が次の挑戦を支えてくれた
今回、私を支えてくれたのは、飛行機に対する自信ではありませんでした。
それまでに経験した、
「怖かったけれど乗れた」
という経験です。
普通電車
快速電車
快速急行
快速特急
新幹線
これらの経験が、
「今回も何とかできるかもしれない」
という気持ちにつながりました。
③ 「不安がなくなるまで待つ」必要はなかった
今回も、搭乗前には不安がありました。
それでも、完全に不安がなくなってから乗ったわけではありません。
不安を抱えたまま搭乗し、実際に飛行機の中で過ごしてみた。
その結果、私の場合は不安が落ち着いていきました。
これは、それまでの認知行動療法のトレーニングでも何度も経験してきたことでした。
ただし、これで飛行機を克服したわけではない
今回、11年ぶりに飛行機に乗れたことで、大きな自信にはなりました。
しかし、
「一度乗れたから、もう飛行機は完全に大丈夫」
とまでは考えていません。
これまでの経験でも、成功した後に途中下車したことがあります。
一度うまくいったからといって、その後も毎回同じようにいくとは限りません。
だからこそ、今回の成功を「ゴール」と考えるのではなく、
「次の挑戦につながる一つの成功体験」
として捉えることにしました。
11年ぶりの搭乗で得たもの
今回の経験で、私の中では一つの大きな思い込みが変わりました。
それは、
「自分はもう飛行機には乗れない」
という思い込みです。
11年間乗っていなかったので、自分の中では「飛行機に乗れない」ということが、いつの間にか当たり前になっていました。
しかし、実際には乗ることができました。
そして、乗ってみると、搭乗前に想像していたほどのことは起きませんでした。
もちろん、これだけで今後すべての飛行機に問題なく乗れると決まったわけではありません。
それでも、
「飛行機に乗れない自分」しか知らなかった私が、「飛行機に乗れた自分」を経験できた。
これは大きな変化でした。
認知行動療法は「一発で克服する」ものではなかった
これまでのトレーニングを振り返ると、私は何度も不安になっています。
回避したこともあります。
途中で降りたこともあります。
それでも、また挑戦しました。
今回の飛行機も、その延長線上にあります。
私の場合、認知行動療法のトレーニングを続ける中で、
「不安がある=行動できない」ではない
という感覚が少しずつ身についてきました。
今回も、不安がなくなったから飛行機に乗れたのではありません。
不安がある状態で搭乗し、実際の経験を積むことができた。
そこに今回の意味があったと思っています。
そして、11年ぶりの飛行機搭乗は、私にとって空路への最初の一歩になりました。
次は、この成功を一度きりのものにせず、別の路線でも飛行機に乗れるかを試していきます。
関連記事
-

【認知行動療法⑦】30分の壁を越えた日|ロマンスカーで無停車区間に挑戦した体験
パニック障害の認知行動療法で、30分を超える無停車区間に挑戦した私の体験を紹介。乗車前の予期不安に対して、メモや考え方の切り替え、注意の分散を試しながら壁を乗り越えた過程と、挑戦から学んだことを解説します。
続きを見る
-

【認知行動療法⑧】新幹線のぞみに挑戦|1時間半の無停車区間を乗り越えた体験
パニック障害の認知行動療法で、新幹線のぞみに挑戦した私の体験を紹介。約1時間半の無停車区間への不安と向き合い、呼吸法や考え方を工夫しながら乗り越えた過程と、挑戦から学んだことを解説します。
続きを見る
-

【認知行動療法⑩】2回目の飛行機に挑戦|羽田から札幌まで乗り切った体験
パニック障害の認知行動療法で、2回目の飛行機に挑戦した私の体験を紹介。羽田から札幌までの搭乗を通じて、過去の成功体験を次の挑戦につなげた過程や、飛行機トレーニングから学んだことを解説します。
続きを見る



