前回の記事では、一度は乗れるようになった電車に、再び乗れなくなっていった経過を書きました。
飛行機を回避したことをきっかけに、少しずつ電車への不安も大きくなっていきました。
最初は駅間時間の長い区間を避ける。
それでも難しくなると、さらに短い区間を選ぶ。
そして最終的には、各駅停車にも乗りづらくなってしまいました。
「このままではまずい」
そう考えた私は、もう一度、認知行動療法のカウンセリングを受けることにしました。
実に10年ぶりのカウンセリング再開でした。
10年ぶりに認知行動療法のカウンセリングへ
久しぶりに訪れたカウンセリング室では、以前のことを思い出しました。
最初に認知行動療法へ取り組んだとき、私は不安階層表を作りました。
各駅停車から始めて、
快速電車
特急電車
新幹線
そして飛行機
少しずつ挑戦することで、最終的には飛行機に乗って沖縄まで行けるようになりました。
ところが、その後に飛行機を回避するようになり、電車まで避けるようになってしまいました。
今度は、そこからもう一度やり直すことになります。
「この10年で新しい治療法があるかも」と期待していた
正直に言うと、私は少し期待していました。
10年も経っています。
「この10年の間に、もっと効率的な方法が出ているのではないか」
「以前より簡単に不安を克服できる方法があるのではないか」
そんなことを考えていました。
しかし、実際にカウンセリングを受けてみると、基本的な考え方は以前と大きく変わっていませんでした。
不安階層表を作る。
できるところから段階的に挑戦する。
回避行動を減らしていく。
必要に応じて呼吸法や筋弛緩法などを使う。
以前、自分が取り組んだ方法と同じです。
私は少し拍子抜けしました。
同時に、
「やっぱり、これをもう一度やるしかないのか」
とも思いました。
これまでのトレーニングは無駄ではなかった
今回のカウンセリングで、一番ほっとしたことがあります。
それは、
これまでのトレーニングが無駄になったわけではない
と確認できたことです。
私は、一度飛行機を回避したことで、
「今まで何年もかけてやってきたことは、全部なくなってしまったのではないか」
と思っていました。
しかし、実際にはそうではありません。
私は以前、新幹線に乗ることができました。
飛行機にも乗ることができました。
沖縄まで飛行機で行くこともできました。
それは紛れもない事実です。
一度できるようになった経験まで消えてしまったわけではありません。
そのことを改めて確認できたのは、私にとって大きな意味がありました。
私の場合、「維持するための練習」が足りなかった
では、なぜ再び難しくなったのでしょうか。
カウンセリングで過去を振り返る中で、私自身が気づいたのが、
「できるようになった後の練習が少なかった」
ということでした。
飛行機や新幹線に乗る機会は、もともとそれほど多くありません。
実家への帰省
長期休暇
仕事の出張
私の場合、そうした限られた機会しかありませんでした。
場合によっては、1年以上まったく飛行機に乗らないこともありました。
一度できるようになったからといって、その後ずっと同じ状態が続くとは限りません。
私の場合は、長い間乗らない期間が続いたことで、以前できていたことが再び難しくなっていったのだと思います。
もちろん、これがすべての人に当てはまるという意味ではありません。
あくまで、私自身の経過を振り返って感じたことです。
「できるようになったら終わり」ではなかった
これまでの私は、
「飛行機に乗れるようになった=克服した」
と考えていました。
だから、一度できるようになった後は、特別な練習をする必要はないと思っていました。
乗る必要があるときに乗ればいい。
そう考えていたのです。
しかし、今回の経験で、
「できるようになること」と「できる状態を維持すること」は別なのかもしれない
と考えるようになりました。
これは、今回のカウンセリングで私が得た大きな気づきでした。
今回の不安階層表を作り直す
カウンセリングでは、以前作った不安階層表も作り直しました。
今回の私の状態では、次のような順番になりました。
| 階層 | 挑戦する場面 | 私の不安度 |
|---|---|---|
| 1 | 普通電車・駅間5分 | 60 |
| 2 | 普通電車・駅間10分 | 80 |
| 3 | 特急電車 | 100 |
| 4 | 新幹線 | 100 |
| 5 | 飛行機 | 100 |
不安度は、
0=苦痛なくできる
50=頑張ればできる
100=どうにもできないほど不安
という、私自身の感覚で設定しています。
以前は各駅停車から始めればよかったのですが、今回は最初の段階から不安度60です。
つまり、
「まずは各駅停車に乗る」
という、かなりシンプルなところから再スタートする必要がありました。
駅間5分を、さらに細かく分けることができない
ここで一つ問題がありました。
最初の目標が「普通電車・駅間5分」です。
しかし、駅間5分をさらに短くすることはできません。
「まずは1分」
「次は2分」
というように細かく分けられないのです。
そこで心理士さんから提案されたのが、
「奥様と一緒に乗ってみてはどうでしょう」
という方法でした。
私はその言葉を聞いて、以前のトレーニングを思い出しました。
そういえば、最初の認知行動療法でも、家族と一緒に電車に乗ることがありました。
「一人でやらなければ」と考えすぎていた
私はいつの間にか、
「自分一人で乗れるようにならなければ意味がない」
と思っていました。
でも、よく考えてみれば、それは最終目標です。
最初から一人でできる必要はありません。
今回の私は、すでに一度、飛行機に乗れるところまで進んでいました。
だからこそ、
「一人でできるようになるまで頑張る」
ではなく、
「今の自分が挑戦できる条件を作る」
ことが大切だと考えるようになりました。
妻と一緒なら挑戦できる。
それなら、まずはそこから始めればいい。
「頑張ればできそう」というラインを探す
今回の不安階層表を作って、改めて感じたことがあります。
挑戦する内容は、
簡単すぎても意味がないし、難しすぎても続きません。
「少し頑張ればできそう」
というラインを探す必要があります。
私の場合、駅間5分の普通電車は、一人では不安度60でした。
でも、妻と一緒なら挑戦できるかもしれない。
そう考えると、同じ「駅間5分」でも条件を変えることで、挑戦できる可能性が出てきます。
これは、以前のトレーニングではあまり意識していなかったことでした。
もう一度、各駅停車から始める
今の私は、飛行機どころか普通電車にも苦労しています。
以前、
新幹線のぞみに乗ったこと。
飛行機に乗ったこと。
沖縄まで行ったこと。
それらを考えると、
「またここからなのか」
という気持ちは当然あります。
でも、私は一度経験しています。
各駅停車から始めて、
快速電車
特急
新幹線
飛行機
そこまで進むことができたのです。
だから今回は、
「もう一度、各駅停車から始めればいい」
と考えることにしました。
以前より遠回りになるかもしれません。
時間もかかるかもしれません。
それでも、一度経験した道です。
今回のカウンセリングで分かったこと
10年ぶりにカウンセリングを再開して、私が感じたことを整理すると、次の3つです。
① 以前の成功体験は無駄になっていなかった
一度飛行機に乗れるようになったという事実は消えません。
再び難しくなったからといって、それまでの経験がゼロになるわけではありませんでした。
② 私の場合は「維持するための練習」が少なかった
できるようになった後、飛行機や新幹線に乗る機会が少なく、長い間まったく乗らないこともありました。
そのことが、今回の再挑戦を考えるきっかけになりました。
③ 今の自分に合わせて、もう一度階段を作ればいい
以前と同じ場所から始める必要はありません。
そのときの自分の状態を確認して、今できるところから階段を作り直す。
私の場合は、それが「妻と一緒に駅間5分の普通電車に乗る」ことでした。
おわりに|失ったのではなく、もう一度積み上げる
今回のカウンセリングを受ける前、私は、
「せっかくできるようになったのに、全部元に戻ってしまった」
と思っていました。
でも、話をする中で少し考え方が変わりました。
確かに、今は以前できていたことができません。
しかし、
以前できたという経験までなくなったわけではありません。
その経験を土台にして、もう一度積み上げればいい。
そう考えると、少しだけ気持ちが楽になりました。
10年ぶりのカウンセリングで、私は「新しい特効薬」を見つけたわけではありません。
むしろ、
以前と同じように、小さな挑戦を積み重ねるしかない
ということを改めて確認したのです。
そして、私の再挑戦は、
普通電車の駅間5分
から始まることになりました。
次の記事では、実際に妻と一緒に普通電車へ乗り、もう一度「駅間5分」に挑戦したときのことを書きます。
関連記事
-

【認知行動療法⑯】飛行機を避けることを選んだ日|再びトレーニングが必要になった体験
パニック障害の認知行動療法で、一度は乗れるようになった飛行機を避けることになった私の体験を紹介。帰省中の飛行機で感じたことや、回避を選んだことで気づいたこと、その後もう一度トレーニングを始めるまでの過程を解説します。
-

【認知行動療法⑰】再び各駅停車から|電車に乗れなくなった私が、もう一度始めるまで
パニック障害の認知行動療法で、一度は乗れるようになった電車に再び乗れなくなった私の体験を紹介。回避行動が日常生活に与えた影響や、もう一度各駅停車からトレーニングを始めるまでの過程を解説します。
-

【認知行動療法⑲】普通電車に再挑戦|呼吸法を使って「駅間5分」からやり直した体験
パニック障害の認知行動療法で、再び普通電車に挑戦した私の体験を紹介。駅間5分から始め、呼吸法を使って駅間10分へ進んだ過程や、一度回避した後に再挑戦して乗り切った経験から学んだことを解説します。



