カバードコールETFには、QYLD、JEPI、JEPQ、SPYI、QQQIなど、さまざまな商品があります。
それぞれの特徴や分配金、運用実績を詳しく比較した内容については、以下の記事で紹介しています。
これらを比較するとき、つい「どのETFが一番高配当なのか」「どのETFの成績が良いのか」というランキングに目が向きがちです。
しかし、退職後の資産運用を考えるなら、単純なランキングだけでカバードコールETFを選ぶべきではないと私は考えています。
重要なのは、
「どの指数を選ぶか」と「どのようなカバードコール設計を選ぶか」を分けて考えること
です。
NASDAQ100系とS&P500系では、そもそも投資する企業やセクター構成が異なります。
一方、QYLD、JEPQ、QQQI、GPIQなどの違いは、主としてオプションの使い方や、インカムとキャピタルゲインのバランスにあります。
この記事では、カバードコールETFを「おすすめランキング」ではなく、自分の運用目的から選ぶ方法について考えてみます。
カバードコールETFは「指数」と「設計」を分けて考える
カバードコールETFを選ぶ際には、まず次の2段階に分けると分かりやすくなります。
第1段階:どの指数を選ぶか
代表的なのが、
- NASDAQ100
- S&P500
です。
これは主に原資産の分散に関係します。
第2段階:どの設計を選ぶか
同じNASDAQ100系でも、
- QYLD
- JEPQ
- QQQI
- GPIQ
などでオプションの利用方法が異なります。
S&P500系にも、
- XYLD
- JEPI
- SPYI
- GPIX
などがあります。
こちらは、インカムをどれだけ重視するのか、キャピタルゲインをどこまで残したいのかという運用目的との関係が大きくなります。
この2つを混同しないことが、カバードコールETFを選ぶうえで重要です。
NASDAQ100系とS&P500系を組み合わせる意味
まず、指数について考えてみます。
NASDAQ100は、Microsoft、NVIDIA、Apple、Amazon、Broadcomなど、米国を代表する大型成長企業への比重が高い指数です。
そのため、
成長性を取り込みながら、カバードコールによってインカムを得る
という戦略に向いています。
一方、S&P500は米国の大型株約500社で構成され、情報技術だけでなく、金融、ヘルスケア、資本財、生活必需品、エネルギー、公益、不動産など、幅広いセクターを含んでいます。
したがって、
NASDAQ100系+S&P500系
という組み合わせには明確な意味があります。
NASDAQ100だけでは不足しやすいセクターを、S&P500が補完できるからです。
NASDAQ100には金融セクターがない
特に分かりやすいのが金融セクターです。
NASDAQ100は金融企業を基本的に含まない指数です。
一方、S&P500には、
- JPMorgan Chase
- Bank of America
- Wells Fargo
- Goldman Sachs
などの金融企業が含まれています。
したがって、NASDAQ100系だけを保有すると金融セクターへのエクスポージャーがほぼなくなります。
S&P500系を組み合わせれば、この偏りを補うことができます。
主要セクターをほぼカバーできる
S&P500そのものが幅広いセクターを含んでいるため、S&P500系カバードコールETFを1本組み入れれば、主要セクターの「取りこぼし」はかなり小さくなります。
| セクター | NASDAQ100 | S&P500 |
|---|---|---|
| 情報技術 | ◎ | ◎ |
| コミュニケーション・サービス | ◎ | ○ |
| 一般消費財 | ◎ | ○ |
| 金融 | ― | ◎ |
| ヘルスケア | ○ | ◎ |
| 資本財・産業 | ○ | ◎ |
| 生活必需品 | △ | ○ |
| エネルギー | ― | ○ |
| 公益 | ― | ○ |
| 素材 | △ | ○ |
| 不動産 | ― | ○ |
※記号は各指数における相対的な組入れの厚みを示す概念的なものです。
つまり、
NASDAQ100+S&P500なら、米国大型株の主要セクターをほぼすべてカバーできる
と考えてよいでしょう。
ただし、ここには重要な注意点があります。
「カバーできる」と「均等に分散される」は違う
NASDAQ100とS&P500を組み合わせても、セクターが均等になるわけではありません。
むしろ、情報技術への偏りはかなり大きくなります。
NASDAQ100は情報技術への比重が非常に高く、S&P500も現在は情報技術が最大のセクターです。
したがって、
NASDAQ100+S&P500
=完全にバランスの取れたセクターポートフォリオ
ではありません。
正確には、
「幅広いセクターをカバーしながら、情報技術や成長株をかなり厚くしたポートフォリオ」
と考えるべきです。
これは私自身がNASDAQ100系とS&P500系を組み合わせる際にも意識している点です。
セクターが違っても、株式市場全体の暴落には弱い
もう一つ注意したいのが、セクター分散と値動きの分散は別物ということです。
NASDAQ100とS&P500は構成銘柄やセクターが異なりますが、どちらも米国大型株を中心とする株式指数です。
そのため、両者の値動きには高い相関があります。
つまり、
「NASDAQ100とS&P500を組み合わせれば、株式市場の暴落リスクも大きく減る」
とは考えない方がよいでしょう。
NASDAQ100とS&P500を組み合わせる主な目的は、
セクターや企業特性の偏りを緩和すること
です。
株式市場そのもののリスクを減らすには、債券など異なる資産を組み合わせる必要があります。
では「新しい設計」のカバードコールETFを選べばいいのか?
ここで、カバードコールETFの「世代」の問題が出てきます。
例えばNASDAQ100系なら、
QYLD → JEPQ → QQQI → GPIQ
と、新しいETFになるにつれてオプション戦略が変化しています。
これを見ると、
「新しいETFほど設計が改良されているのでは?」
と考えたくなります。
私も当初はそう考えていました。
しかし、実際の運用実績を比較すると、単純に「新しいほど優秀」とはいえません。
カバードコールETFは、それぞれ異なる設計思想を持っているからです。
カバードコールは「インカム」と「キャピタル」の交換
そもそもカバードコールは、
- 株式を保有する
- その株式に対するコールオプションを売る
- オプションプレミアムを受け取る
という仕組みです。
オプションを売ることで、プレミアムというインカムを得られる一方、株価が大きく上昇した場合には、その上昇の一部を取り込めなくなる可能性があります。
つまり、
インカムを増やすことと、キャピタルゲインを最大限取り込むことには、一定のトレードオフがあります。
カバードコールETFの仕組みや、退職後の資産運用で活用するメリットについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
「世代」の違いは、リスク分散ではなく運用目的で考える
ここが今回の記事で最も伝えたいポイントです。
例えば、
QYLD+QQQI
を組み合わせても、両方ともNASDAQ100を原資産とするため、NASDAQ100そのものの値動きからは逃れられません。
「古い設計」と「新しい設計」を組み合わせたからといって、必ずしも大きな分散効果が得られるわけではありません。
同じことは、
XYLD+SPYI
にも当てはまります。
一方で、
QQQI+SPYI
なら、
- NASDAQ100
- S&P500
という異なる原資産を組み合わせています。
したがって、こちらには指数の分散という明確な意味があります。
同じNASDAQ100系でも、JEPQとQQQIではオプション戦略や分配金の特徴が異なります。両者の違いについては、以下の記事で詳しく比較しています。
S&P500系カバードコールETFについても、JEPIとSPYIでは設計思想が異なります。両者の違いについては、こちらで詳しく比較しています。
では、どの「世代」を選べばいいのか
私は「新しいから買う」「古いから避ける」という選び方はしません。
むしろ、
自分はインカムとキャピタルのどちらをどの程度重視するのか?
という視点で選ぶべきだと思います。
インカムを最優先する
現在のキャッシュフローを最大限重視するなら、オプションプレミアムを積極的に取り込む設計に魅力があります。
インカムとキャピタルを両立する
分配金を受け取りながら、株価上昇による資産成長もある程度残したいなら、上昇余地を意識した設計が候補になります。
キャピタルをより重視する
将来の資産成長を優先するなら、カバードコールそのものが本当に必要なのかを考える必要があります。
この場合は、S&P500やNASDAQ100の現物・投資信託などとの比較も必要です。
ディフェンシブセクターのカバードコールETFが少ない理由
ここまで考えると、
「では、生活必需品や公益などのディフェンシブセクターを原資産にしたカバードコールETFはないのか?」
という疑問も出てきます。
実際、NASDAQ100やS&P500を原資産とするカバードコールETFほど、ディフェンシブセクターに特化した商品は一般的ではありません。
これには理由があります。
ディフェンシブ株には、もともと高配当銘柄が多い
生活必需品なら、
- Coca-Cola
- PepsiCo
- Procter & Gamble
などがあります。
ヘルスケアにも高配当企業が存在し、公益株も配当を重視する企業が多い傾向があります。
つまり、
「ディフェンシブ株から高いインカムを得たい」
という需要に対しては、
カバードコールではなく、現物の高配当ETF
という選択肢があります。
SCHD、VYM、HDVなどがその代表です。
カバードコールは「値動きの大きさ」も収益源になる
さらに、オプションのプレミアムは一般に市場の予想変動率が高いほど大きくなりやすいという特徴があります。
そのため、
値動きの比較的小さいディフェンシブ株
よりも、
NASDAQ100のような値動きの大きい株式
を原資産にした方が、カバードコールによるインカムを得る戦略との相性が良くなります。
その結果として、
NASDAQ100+カバードコール
という商品が成立しやすくなります。
ディフェンシブ株にカバードコールを組み合わせると何が起こるか
もちろん、
「ディフェンシブ株+カバードコール」
が意味のない戦略というわけではありません。
退職後のように、
株価の大幅な上昇よりも、現在のキャッシュフローを重視する
投資家にとっては合理性があります。
ただし、ディフェンシブ株はもともと値上がり期待が比較的小さいことがあります。
そこにカバードコールを加えると、
「もともと大きくない値上がり余地をさらに制限して、インカムを増やす」
という構造になります。
そのため、
高配当株をそのまま保有する
という選択肢との比較が重要になります。
私は「カバードコールだけ」で分散する必要はないと考える
ここで、私自身の退職金運用に戻ります。
私が検討しているポートフォリオは、
- QQQI
- SPYI
- SPHY
- JPST
です。
この4つには、それぞれ異なる役割を持たせています。
QQQI
NASDAQ100系の成長株を保有しながら、高いインカムを得る。
SPYI
S&P500をベースに、NASDAQ100とは異なるセクターを取り込みながらインカムを得る。
SPHY
ハイイールド債によって、株式とは異なるインカム源を持つ。
JPST
超短期債によって、価格変動を抑えた資産と流動性を確保する。
つまり、
NASDAQ100とS&P500のカバードコールETFで株式のセクタを分散し、SPHYとJPSTによって資産クラスそのものを分散しています。
「指数は分散、設計は目的で選ぶ」
ここまでの内容をまとめると、カバードコールETFの選択には次のような考え方ができます。
| 選択 | 主な意味 |
|---|---|
| NASDAQ100系+S&P500系 | 原資産・セクターの分散 |
| QYLD→JEPQ→QQQIなど設計の違い | インカムとキャピタルのバランス |
| カバードコール+債券ETF | 資産クラスの分散 |
| カバードコール+高配当ETF | インカム源の分散 |
このように考えると、「カバードコールETFを何本買うか」という発想から一歩進んで、
「ポートフォリオの中で、それぞれのETFにどんな役割を持たせるのか」
という考え方に変わります。
私がNASDAQ100系とS&P500系を組み合わせる理由
私自身は、退職後の資産運用で安定したインカムを最大化することを重視しています。
退職後は給与所得がなくなるため、運用開始直後からキャッシュフローを得る必要があります。
そのため、単純に「長期的に増配する企業を持って、何十年も待つ」という戦略だけでは、自分の目的には合いません。
一方で、資産をすべて高配当・高インカムだけに寄せればよいとも考えていません。
健康寿命を考えれば、現在のインカムを得ながら、資産そのものの成長余地も残しておきたいからです。
そこで、
NASDAQ100系
→ 成長性を取り込みながらインカム化
S&P500系
→ より幅広いセクターを取り込みながらインカム化
という組み合わせに意味があると考えています。
まとめ|カバードコールETFは「資産運用の目的」から選ぶ
カバードコールETFを比較すると、どうしても分配金利回りや過去のリターンを見て「一番良いETF」を探したくなります。
しかし、カバードコールETFにはそれぞれ異なる役割があります。
重要なのは、
① どの指数を選ぶか
そして、
② どのようなオプション設計を選ぶか
を分けて考えることです。
NASDAQ100系とS&P500系を組み合わせれば、米国大型株の主要セクターをほぼカバーできます。
ただし、NASDAQ100の影響によって情報技術などへの偏りは大きくなるため、「完全なセクター分散」と考えるべきではありません。
一方、QYLD、JEPQ、QQQI、GPIQなどの「世代」の違いは、単純なリスク分散というより、
インカムをどこまで重視するか、キャピタルゲインをどこまで残すか
という運用目的から考えるべきでしょう。
そして、ディフェンシブセクターについては、無理にカバードコールETFで補う必要はありません。
S&P500系ですでに主要セクターを含んでいるうえ、さらにディフェンシブ性やインカムを高めたいなら、高配当株ETFや債券ETFという別の選択肢があります。
結局のところ、私が重要だと考えるのは、
「指数は分散し、設計は目的で選ぶ」
という考え方です。
カバードコールETFを「高配当ETF」として単独で比較するのではなく、退職後のポートフォリオの中でどの役割を担わせるのかまで考えて選ぶことが、長期的な資産運用では重要だと考えています。









