退職後に米国ETFで生活費を補う場合、多くの人は「分配金利回り」に目が向きます。
しかし、私が本当に重要だと考えているのは、
「税引後にいくら手元へ残るのか」
という視点です。
私は退職金3,000万円を米国ETFで運用し、公的年金を補完するキャッシュフローを作る計画を立てています。
現在考えているポートフォリオは次の4銘柄です。
| ETF | 投資額 | 役割 |
|---|---|---|
| QQQI | 900万円 | NASDAQ100高インカム |
| SPYI | 900万円 | S&P500高インカム |
| SPHY | 900万円 | 米国ハイイールド債 |
| JPST | 300万円 | 超短期債・生活防衛資金 |
詳しくは、こちらの記事で紹介しています。
このポートフォリオを検討する中で、私が最も興味を持ったのが「損出し(損益通算)」です。
本当に損出しは得なのでしょうか。
今回は、私自身の退職後の運用をモデルにシミュレーションしてみます。
損出しとは?
損出しとは、含み損があるETFを一度売却して損失を確定させ、その損失を分配金や譲渡益と損益通算する方法です。
例えば、
- 分配金:100万円
- 評価損:100万円
であれば、
分配金100万円と譲渡損失100万円を相殺できます。
その結果、日本で課税される20.315%の税金を軽減できます。
ただし、
利益が増えるわけではありません。
税金を支払うタイミングを調整する制度と考えた方が正確です。
なお、日本で課税される税金と米国で課税される税金の違いについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
シミュレーション条件
今回は次の条件で比較しました。
初期資産
3,000万円
ポートフォリオ
- QQQI:900万円
- SPYI:900万円
- SPHY:900万円
- JPST:300万円
想定分配利回り
| ETF | 利回り(想定) |
|---|---|
| QQQI | 14% |
| SPYI | 12% |
| SPHY | 8% |
| JPST | 5% |
年間分配金は約364万円です。
また、
- 外国税額控除は利用
- 日本税率20.315%
- 年末に評価損があるETFだけ損出し
- 翌営業日に同額買い戻し
としました。
ケース① 損出しをしない場合
年間分配金
364万円
↓
日本課税
約74万円
↓
外国税額控除を利用
↓
手取り
約290万円
30年間同じ条件が続くと仮定すると、日本税だけでも累計で2,000万円を超える負担になる計算です。
もちろん、実際には税率や分配金は変動しますが、税金がキャッシュフローへ与える影響は決して小さくありません。
ケース② 毎年損出しを行った場合
例えば年末時点で
| ETF | 評価損 |
|---|---|
| QQQI | ▲40万円 |
| SPYI | ▲30万円 |
| SPHY | ▲20万円 |
合計90万円の評価損があったとします。
これを年末に損出しすると、
分配金364万円のうち90万円分が損益通算されます。
結果として、日本で課税される所得が減り、日本税も軽減されます。
年間では十数万円~二十万円程度の税負担軽減になる可能性があります。
30年間積み重なれば、数百万円規模のキャッシュフロー改善も期待できます。
ケース③ 暴落時こそ損出しの効果は大きい
例えばリーマンショックやコロナショックのように市場全体が30~40%下落した場合、
QQQI
SPYI
SPHY
はいずれも含み損になる可能性があります。
このような局面では、
評価損を確定することで、翌年以降の分配金課税を大きく軽減できる可能性があります。
暴落は精神的にはつらい出来事ですが、
税務面では「将来発生する損失を早めに活用できる機会」と考えることもできます。
実はJPSTが重要な理由
私のポートフォリオで唯一損出しを目的としていないETFがあります。
それがJPSTです。
JPSTの役割は、
生活費を確保すること
です。
生活費をJPSTから取り崩せるため、
暴落してもQQQIやSPYIを慌てて売却する必要がありません。
つまり、
「どのETFを損出しするか」
を自分で選べるようになります。
これは退職後の資産運用では非常に大きな安心材料になります。
私のポートフォリオで損出ししやすいETF
| ETF | 損出しとの相性 | 理由 |
|---|---|---|
| QQQI | ★★★★★ | 分配利回りが高く、価格変動も比較的大きい |
| SPYI | ★★★★★ | 分配利回りが高く、税効率にも注目している |
| SPHY | ★★★★☆ | 景気後退時には価格が下落しやすい |
| JPST | ★☆☆☆☆ | 値動きが小さく、損失が出にくい |
私が考える損出しの本当のメリット
以前、私は
「損出しはキャピタルゲインとインカムゲインを相殺しているだけではないのか?」
という疑問を持っていました。
今でも、その考え方自体は間違っていないと思っています。
実際、
損出しは資産そのものを増やす制度ではありません。
しかし、
退職後は
「今年いくら使えるお金が残るか」
が生活に直結します。
例えば、
今年18万円多く手元に残れば、
生活費として使うこともできますし、
再投資に回すこともできます。
将来売却時に税金が増える可能性はありますが、
退職後のキャッシュフローを改善できることは大きなメリットだと考えています。
私は、
損出しとは
「税金をなくす制度」ではなく、税金をコントロールする制度
だと考えています。
まとめ
退職後のインカム投資では、利回りだけを追いかけるのではなく、
税引後にいくら手元へ残るか
という視点が欠かせません。
私が今後活用したいと考えている節税策は次の4つです。
- 損益通算(損出し)
- 外国税額控除
- NISAの活用
- 税効率に配慮したETFの選択(ROC・QIIなども含めて継続的に研究)
退職後は給与収入という大きな収入源がなくなります。
だからこそ、私は「高い利回り」を追い求めるだけではなく、
税引後キャッシュフローを最大化する運用
を目指していきたいと思います。
-

【退職金運用】JEPQ・JEPIからQQQI・SPYIへ?私がROCとQIIに注目した理由
はじめに|退職金運用を考える中で気付いた「税金の壁」 前回の記事では、 退職金運用の目的を 元本毀損しない範囲でキャッシュフローを最大化する と定め、 以下のポートフォリオを検討しました。 資産クラス ...
続きを見る
-

インフレ時代の税負担を減らすには?NISA・iDeCo・マイクロ法人を活用した資産設計
物価は上がっているのに、生活はなぜ楽にならないのか ここ数年、日本では食料品や電気・ガス料金をはじめ、多くのものが値上がりしています。 一方で、「賃上げ」という言葉をニュースで見かける機会も増えました ...
続きを見る







