私は定年退職後の資産運用を考える中で、高いインカムを生み出す債券ETFとしてSPHYとVWOBのどちらをポートフォリオに組み入れるか、以前かなり迷った時期がありました。
SPHYは米国のハイイールド社債に投資するETFです。
一方、VWOBは新興国政府が発行する米ドル建て国債に投資するETFです。
どちらも一般的な米国債より高い利回りが期待できる一方で、値下がりリスクもあります。
最終的に私はSPHYを選択し、VWOBはポートフォリオに組み入れないことにしました。
ただ、これは「SPHYの方が優れたETFだから」という単純な話ではありません。
自分が目指しているのが、定年退職後に毎月の分配金を生活費の一部として活用するインカム重視のポートフォリオだったからです。
この記事では、SPHYとVWOBの特徴を比較し、利回りや経費率だけでなく、QII、金利リスク、過去の市場ショックなども考慮しながら、なぜ私はSPHYを選んだのかを整理してみます。
SPHYとVWOBはどんなETFなのか
まず、それぞれのETFの性格を簡単に整理します。
SPHYとは
SPHYは、State StreetのSPDR Portfolio High Yield Bond ETFです。
米国のハイイールド社債を中心に投資するETFで、比較的信用力の低い企業が発行する債券を幅広く保有しています。
その分、米国国債などと比較すると信用リスクが高い一方、利回りも高くなります。
私がSPHYに注目した最大の理由も、この高いインカム収入でした。
SPHYの特徴や分配金などについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
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VWOBとは
VWOBは、VanguardのVanguard Emerging Markets Government Bond ETFです。
新興国政府が発行する米ドル建て債券に幅広く投資します。
サウジアラビア、メキシコ、インドネシア、トルコ、UAE、アルゼンチン、ブラジル、カタールなど、さまざまな新興国が組み入れられています。
つまり、
SPHY=米国企業の信用リスク
VWOB=新興国政府の信用リスク
という違いがあります。
どちらも「債券ETF」ですが、実際にはかなり性格の異なる商品です。
SPHYとVWOBを比較
2026年時点のデータを基準に比較すると、おおむね次のような違いがあります。
| 比較項目 | SPHY | VWOB |
|---|---|---|
| 投資対象 | 米国ハイイールド社債 | 新興国政府債券 |
| 通貨 | 米ドル | 米ドル |
| 経費率 | 0.05% | 0.15% |
| 利回り | SPHYの方が高い | SPHYより低い |
| デュレーション | 約3年 | 約7年 |
| 金利リスク | 比較的小さい | 比較的大きい |
| 信用リスク | 米国企業 | 新興国政府 |
| QII | 対象 | 対象外 |
| 分配 | 毎月 | 毎月 |
| 主なリスク | 景気悪化・企業倒産 | 新興国・金利・ドル高・地政学 |
この比較で私が特に重視したのが、
「利回り」「経費率」「QII」「金利リスク」
の4点です。
① 利回りはSPHYが有利
まず、インカム重視の投資家にとって最も分かりやすい違いが利回りです。
SPHYの利回りは5%台後半から8%前後のレンジで推移しており、VWOBより高い利回りが期待できます。
もちろん債券ETFの利回りは市場環境によって変化するため、購入時の利回りが将来もそのまま維持されるわけではありません。
それでも、
「できるだけ高い分配金を得たい」
という目的なら、SPHYの方が私の運用方針には合っていました。
定年退職後には、資産そのものを大きく取り崩すよりも、できるだけ分配金を生活費に充てたいと考えています。
そのため、利回りの違いは重要な比較ポイントでした。
② 経費率もSPHYが有利
経費率にも差があります。
SPHYの経費率は0.05%。
一方、VWOBは0.15%です。
差は0.10ポイントなので、一見すると小さく感じます。
しかし、退職金という大きい金額の長期運用では無視できません。
インカム重視で長期間保有するのであれば、低コストであることはSPHYのメリットです。
③ QII制度でもSPHYが有利
私がSPHYを選択する上で、かなり重視したのがQII(Qualified Interest Income)です。
米国ETFなどの分配金の原資がQII(米国債・米社債の利息等)である場合、米国非居住者(日本の投資家)に対する米国税(10%)が免除(非課税)される仕組みがあります。
SPHYは米社債が多いためQIIの対象となるETFです。
VWOBは米国債・米社債のいずれでもないため、QIIの対象外でした。
この違いは、単純な分配金利回りだけ比較しても見えてきません。
私の場合、
「高い分配金を受け取る」
だけでなく、
「分配金に対する日米の税引後に実際いくら手元に残るのか」
を重視しています。
そのため、QIIの違いもSPHYを選ぶ理由になりました。
米国ETFのQII制度については、こちらの記事で詳しく解説しています。
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④ VWOBは金利変動の影響を受けやすい
VWOBはSPHYよりデュレーションが長くなっています。
おおまかに、
- SPHY:約3年
- VWOB:約7年
です。
デュレーションが長いということは、金利が変化したときに債券価格が大きく動きやすいということです。
つまり、
金利上昇局面ではVWOBの方が不利になりやすい
一方、
金利低下局面ではVWOBの方が価格上昇の恩恵を受けやすい
という特徴があります。
「高利回り債券ETF」と一括りにしてしまうと見えにくい部分ですが、SPHYとVWOBでは金利リスクにも違いがあります。
VWOBは本当に分散効果が高いのか
VWOBに魅力を感じた理由の一つが、新興国政府債券への分散投資です。
SPHYは米国企業のハイイールド債券なので、どうしても米国経済との関連性があります。
それに対してVWOBなら、
- 中東
- 中南米
- アジア
- その他新興国
へ幅広く分散できます。
一見すると、
「SPHYとは違う値動きをする資産を持てる」
ように思えます。
これは実際にVWOBのメリットです。
ただし、過去の市場ショックを調べていくと、私は少し考え方が変わりました。
VWOBが大きく下落した局面
VWOBを検討する上では、「債券だから安全」と考えないことが重要です。
VWOBにも大きな下落局面があります。
2013年:テーパー・タントラム
2013年、FRBが量的緩和の縮小を示唆すると、米国金利が上昇しました。
その結果、
- 米ドル高
- 新興国からの資金流出
- 新興国債券価格の下落
が発生しました。
VWOBのような新興国債券は、米国の金融政策の影響を強く受けます。
2020年:コロナショック
新型コロナウイルスの感染拡大によって、世界中のリスク資産が急落しました。
この局面では、
- 株式
- ハイイールド債
- 新興国債券
などがまとめて売られました。
VWOBも大きく下落しています。
ただし、その後FRBが大規模な金融緩和を行ったことで、金融市場は急速に回復しました。
2022年:利上げショック
VWOBを考える上で特に参考になるのが2022年です。
FRBはインフレを抑えるため、急速な利上げを実施しました。
これによって、
金利上昇+ドル高+新興国からの資金流出
という複数の逆風がVWOBを直撃しました。
さらにVWOBはデュレーションが長いため、金利上昇による価格下落の影響も受けやすくなります。
「新興国政府債券だから米国企業のハイイールド債より安全」
とは単純には言えないことが分かります。
SPHYとVWOBは「違う理由」で下落する
ここは今回の比較で特に重要だと思いました。
SPHYが苦しくなる典型的な局面は、
- 米国景気後退
- 企業倒産増加
- 信用スプレッド拡大
- ハイイールド債からの資金流出
です。
一方、VWOBは、
- 米国金利上昇
- ドル高
- 新興国からの資金流出
- 新興国の財政悪化
- 政治・地政学リスク
などが問題になります。
つまり、
SPHYとVWOBは異なるリスクを持っている
のは間違いありません。
しかし、
「SPHYが下がるとき、VWOBは必ず上がる」わけではない
という点が重要です。
世界的な金融危機では、どちらもリスク資産として売られる可能性があります。
VWOBの国別構成も確認してみた
VWOBの魅力とリスクを理解するため、国別構成も確認しました。
上位には、
- サウジアラビア
- メキシコ
- インドネシア
- トルコ
- UAE
- アルゼンチン
- ブラジル
- カタール
- コロンビア
- フィリピン
などが含まれています。
ここで興味深かったのが、中東の産油国がかなり大きな比率を占めていることです。
そのため、例えば中東情勢が悪化して原油価格が上昇する場合、
産油国の財政にはプラス
となる可能性があります。
一方で、戦争が長期化して世界的なインフレや金融市場の混乱につながれば、新興国債券全体にはマイナスとなる可能性があります。
VWOBがSPHYより有利になるのはどんなときか?
ここまで調べると、VWOBにも明確に有利な局面があることが分かります。
例えば、
① 米国企業の信用不安が強まる
米国企業の倒産懸念が急激に高まれば、SPHYは大きな影響を受けます。
一方、新興国政府の財政が比較的健全なら、VWOBの方が底堅くなる可能性があります。
② FRBが急速な利下げを行う
VWOBはデュレーションが長いため、金利が大幅に低下する局面では価格上昇の恩恵を受けやすくなります。
③ 新興国経済が改善する
新興国の経済成長や財政改善、資源価格上昇などによって政府の信用力が改善すれば、VWOBには追い風です。
④ 米国と新興国の景気サイクルが逆方向になる
米国企業の信用環境が悪化する一方で、新興国経済が改善するような局面では、SPHYよりVWOBが有利になる可能性があります。
それでも私はSPHYを選んだ
ここまで比較すると、
「VWOBにも結構メリットがあるのでは?」
と思うかもしれません。
実際、その通りです。
VWOBは決して悪いETFではありません。
むしろ、
新興国政府債券に分散投資しながら、比較的高い利回りを得たい投資家
にとって魅力的なETFだと思います。
それでも私はSPHYを選びました。
理由は非常にシンプルです。
私の目的は、
定年退職後の生活を支えるキャッシュフローをできるだけ安定して確保すること
だからです。
そのため、
- より高い利回り
- 低い経費率
- QII
- 比較的短いデュレーション
などを総合的に評価して、SPHYを選択しました。
私の現在のポートフォリオ
現在、私が考えている定年退職後のポートフォリオは、
| ETF | 役割 | 投資額 |
| QQQI | 高インカム(NASDAQ100) | 900万円 |
| SPYI | 高インカム(S&P500) | 900万円 |
| SPHY | 高インカム(ハイイールド債) | 900万円 |
| JPST | 安定運用・待機資金 | 300万円 |
| 合計 | 3,000万円 |
という構成です。
ここにVWOBを追加することも検討しましたが、最終的には見送りました。
私にとっては、
SPHY=インカムを稼ぐ
JPST=守り・待機資金
という役割分担の方が分かりやすかったからです。
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VWOBを選ぶべき人、SPHYを選ぶべき人
今回の比較をまとめると、次のようになります。
| こんな人 | 向いているETF |
| とにかく高いインカムを重視 | SPHY |
| 経費率を抑えたい | SPHY |
| QIIを重視したい | SPHY |
| 米国企業の信用リスクを取れる | SPHY |
| 新興国政府債券に投資したい | VWOB |
| 新興国への分散を重視 | VWOB |
| 金利低下による価格上昇も狙いたい | VWOB |
| 米国企業とは異なる信用リスクを持ちたい | VWOB |
つまり、
SPHYとVWOBのどちらが優れているかではなく、投資目的によって選択が変わる
というのが今回の結論です。
まとめ
今回、SPHYとVWOBを改めて比較してみて分かったのは、高利回り債券ETFだからといって、必ずしも「安全な債券」ではないということでした。
SPHYには米国企業の信用リスクがあります。
VWOBには新興国政府の信用リスク、金利リスク、ドル高リスク、地政学リスクなどがあります。
過去の市場ショックを振り返っても、
- コロナショック
- 2022年の急速な利上げ
- 新興国からの資金流出
などではVWOBも大きく下落しました。
一方で、米国企業の信用不安が深刻化したり、新興国経済が改善したり、米国金利が大幅に低下する局面では、VWOBがSPHYより有利になる可能性もあります。
そのため、VWOBを「悪いETF」と判断したわけではありません。
私の運用目的にはSPHYの方が合っている。
これが最終的な判断です。
投資では、人気のあるETFを選ぶことよりも、
「自分は何のためにそのETFを保有するのか」
を明確にすることの方が重要なのだと思います。
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