体験記

【認知行動療法】飛行機は克服したはずなのに|“別の不安”が重なる苦しさ

2026年5月15日

はじめに

先月、不安階層表の最難関として位置づけていた「沖縄出張」を達成しました。

認知行動療法を始めた頃には想像もできなかった、“飛行機での長距離出張”。

各駅停車から始まり、快速、新幹線、飛行機へと少しずつ段階を上げながら積み重ねてきた認知行動療法。

その大きな節目を越えたことで、

「飛行機は、もうかなり大丈夫になってきたのではないか」

という感覚を持ち始めていました。

そんな中、今度は北海道への出張が決まりました。

沖縄出張を終えた直後ということもあり、周囲から見れば、

「もう飛行機は克服できた」

ように見えていたかもしれません。

実際、自分自身でも、

「北海道なら沖縄より短いし、たぶん大丈夫だろう」

と思っていました。

しかし、今回の不安は“飛行機そのもの”ではありませんでした。

本当に不安だったのは“過去の記憶”だった

今回の出張では、現地で会議のスピーチを担当することになっていました。

これが、想像以上に重くのしかかってきたのです。

飛行機に乗ること自体への恐怖よりも、

「人前で話すこと」

へのプレッシャーが、強いストレスになっていました。

しかも、この組み合わせには、私にとって嫌な記憶がありました。

「飛行機+スピーチ」

このストレスの組み合わせは、かつて私が初めてパニック発作を起こした時と同じシチュエーションでした。

もちろん、頭ではわかっています。

今の自分は、当時とは違う。

認知行動療法も積み重ねてきた。

飛行機の成功体験もある。

それでも、人間の脳は“嫌な記憶”を簡単には忘れてくれません。

前週あたりから、私はずっと落ち着かない状態でした。

飛行機のことを考えて不安になる。

会議のことを考えて不安になる。

さらに、

「初めてパニック発作を起こした時と同じ状況」

という記憶が嫌になる。

そんな状態が続いていたのです。

出発当日の朝――迷いは無かった

そんな不安を抱えたまま迎えた出張当日。

朝は4時起きでした。

睡眠不足や疲労は不安を強めるため、本来ならあまり良い条件ではありません。

しかし、不思議なことに、この時点ではもう迷いはありませんでした。

「行く」

ということ自体は、自然に受け入れられていたのです。

以前のように、

「やっぱりやめたい」

「回避したい」

と激しく揺れる感じはありませんでした。

これは、飛行機に対する認知が以前より改善していたからだと思います。

空港へ向かう途中も比較的落ち着いていました。

ただ、搭乗予定の飛行機を見た時だけ、少し不安が走りました。

「あれ、思ったより小さい機材だな……」

そう感じた瞬間、一気に閉塞感を意識したのです。

待合室で、10秒ほど不安が強まりました。

しかし今回は、その不安に飲み込まれませんでした。

私は自分に言い聞かせました。

「気持ちで負けているぞ」

と。

これは、昔のように“無理やり根性で押さえ込む”感覚とは少し違います。

不安を完全否定するのではなく、

「今、自分は不安に引っ張られそうになっている」

と客観視しながら、意識を戻す感覚でした。

すると、不安は短時間で弱まっていきました。

機内では、自然に落ち着けた

飛行機に乗る頃には、かなり落ち着いていました。

以前のように、

「搭乗後もずっと緊張状態」

という感じではありません。

座席についてからは、持参していた歴史小説を読み始めました。

すると、不思議なほど普通に集中できたのです。

認知行動療法を始めたばかりの頃は、

「不安がある=他のことは何もできない」

という状態でした。

しかしこの頃になると、

「多少不安があっても、別のことへ注意を向けられる」

ようになっていました。

これは非常に大きな変化でした。

本を読んでいるうちに、気づけば眠っていました。

そして目を覚ました時には、飛行機はもう着陸態勢に入っていました。

「飛行機は、本当に大丈夫になってきたのかもしれない」

そう感じました。

それでも残っていた“スピーチ不安”

ただ、問題は飛行機だけでは終わりませんでした。

現地での会議。

そしてスピーチ。

こちらは、最後まで自信を持てませんでした。

「本当に大丈夫だろうか」

「頭が真っ白になったらどうしよう」

そんな不安が消えなかったのです。

結局、緊張しながらのスピーチでしたが、何とか乗り切りました。

“昔は得意だった”という記憶が苦しさになることもある

若い頃の私は、人前で話すことにそこまで苦手意識はありませんでした。

むしろ、比較的得意だと思っていたくらいです。

しかし、パニック障害を経験して以降、

「また発作が起きたらどうしよう」

という意識が常につきまとうようになりました。

すると、本来できていたことにも不安を感じるようになります。

これは、パニック障害のつらいところだと思います。

単に“乗り物が怖くなる”だけではありません。

あらゆる場面に“不安の連想”が広がっていくのです。

「複数の不安」が重なると難易度が跳ね上がる

今回改めて感じたのは、

“不安は単独で存在するとは限らない”

ということでした。

飛行機だけなら大丈夫でも、

そこに別のストレスが重なると、一気に難易度が上がる。

そして、人間は“最も苦手なもの”へ注意を奪われやすい。

今回の場合、

飛行機 の不安 <  スピーチの不安 

という構図でした。

つまり、

「スピーチ不安が残った状態で飛行機へ乗る」

と、全体の負荷が大きくなりすぎるのです。

だからこそ、

“ひとつずつ不安要素を減らす”

ことが重要なのだと思いました。

おわりに

今回の北海道出張を通じて、私は改めて感じました。

認知行動療法は、

「一度成功したら終わり」

ではありません。

不安の形は変わります。

新しい状況。

別のストレス。

複数の不安。

そうしたものが重なることで、また違った難しさが出てきます。

それでも、以前の私と違うのは、

「不安があっても行動できる」

ようになってきたことでした。

飛行機そのものについては、確かに以前より大きく前進しています。

だからこそ今後は、

“飛行機+別のストレス”

への対応も考えていく必要がある。

そんなことを感じた出張でした。

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