体験記

【認知行動療法③】快速急行に挑戦|駅間時間の長い「止まらない区間」を乗り越えた私の体験

2026年5月7日

パニック障害の認知行動療法で、私は電車に乗る練習を少しずつ続けていました。

各駅停車、快速電車、新幹線。

一つずつ課題をクリアすることで、以前なら乗れなかった電車にも少しずつ乗れるようになっていました。

今回の課題は、小田急線の快速急行です。

区間は下北沢から新百合ヶ丘。

私にとって怖かったのは、快速急行そのものではありませんでした。

一番気になっていたのは、

「駅と駅の間が長く、しばらく降りられない」

ということです。

この記事では、駅間時間の長い快速急行に挑戦した私の体験を紹介します。

「途中で降りられないことが怖い」というパニック障害特有の不安に対して、私がどのように向き合ったのかを振り返ります。

新幹線こだまの次に、快速急行へ

前回は、新幹線こだま号に挑戦しました。

私にとって新幹線は、それまで「恐怖の象徴」のような存在でした。

その新幹線に乗ることができたことで、かなり大きな手応えを感じました。

そこで私は、

「この勢いを止めたくない」

と思いました。

認知行動療法のトレーニングでは、私の場合、できた経験を積み重ねることが大切でした。

そこで今回は、前回の経験からあまり時間を空けず、次の課題に挑戦することにしました。

次の課題が、快速急行でした。

「駅間時間が長い」ことが怖かった

今回の快速急行で気になっていたのは、

駅間時間の長さ

です。

下北沢を出ると、新百合ヶ丘までいくつかの駅を通過します。

つまり、いったんその区間に入ると、しばらく途中下車できません。

パニック障害になった私にとって、

「もし途中で不安が強くなったら、どうする?」

という問題は大きなものでした。

電車が止まらない。

すぐには降りられない。

この単純な条件が、不安を大きくしていました。

路線図を見ただけで不安になった

新宿から電車に乗り、快速急行の対象区間へ向かいました。

車内で何気なく路線図を見ると、下北沢から新百合ヶ丘までの区間が目に入りました。

すると、

「長いな」

と感じました。

実際の距離が突然変わったわけではありません。

でも、路線図で見ることで、

「ここから先は、しばらく止まらない」

ということが視覚的に分かります。

その瞬間、実際の距離以上に遠く感じました。

今振り返ると、私の場合は、「これから降りられなくなる」というイメージそのものが不安を強めていたのだと思います。

不安が強くなったとき、メモを書いた

そこで、これまでのトレーニングで使っていた方法を思い出しました。

それが、メモを書くことです。

そのとき感じていることや、頭の中に浮かんでいることを、そのまま書き出しました。

「長い」

「降りられない」

「大丈夫だろうか」

そんなことを紙に書いていきました。

すると、少しずつ気持ちが落ち着いてきました。

頭の中だけで不安について考えていると、同じことを何度も繰り返してしまいます。

それを文字にして外へ出すことで、私の場合は不安な考えを少し客観的に見られるようになりました。

これは私が実際のトレーニングの中で感じた変化です。

メモを書くことがすべての人に同じように役立つとは限りませんが、私にとっては一つの対処法になりました。

「次は新百合ヶ丘まで止まりません」

そして、いよいよその区間が近づきました。

車内アナウンスが流れます。

「まもなく下北沢に到着します。次は新百合ヶ丘まで止まりません」

この言葉を聞いた瞬間でした。

不安が一気に強くなりました。

頭の中に、

「やめるか」

という選択肢が浮かびました。

下北沢で降りてしまえばいい。

そうすれば、少なくとも今の不安からは逃れられます。

実際に、降りることも考えました。

今回は「回避しない」と決めた

しかし、そのとき私は思い直しました。

これまでにも、不安が強くなったときに回避した経験があります。

その瞬間は楽になります。

でも、後になって、

「やっぱり乗れなかった」

という記憶が残ります。

そこで今回は、

「不安があるけれど、このまま乗ってみよう」

と決めました。

不安をなくそうとするのではなく、メモを書くことに意識を向けました。

「怖い」

「でも、今はここにいる」

「もうすぐ下北沢」

そんなふうに、頭の中にあることを書き続けました。

発車すると、不安が変化した

そして、下北沢を出発しました。

ここから新百合ヶ丘まで、しばらく止まりません。

私は身構えていました。

ところが、しばらくすると、

あれほど強かった不安が少しずつ弱くなっていきました。

「まだ大丈夫」

「このまま乗っていられる」

と感じるようになりました。

そして、気がつくと、先ほどまでの強い不安はかなり小さくなっていました。

この経験は、私にとってとても印象的でした。

乗車前には、

「ここから先は大丈夫だろうか」

と考えていたのに、実際にその区間に入ってみると、時間とともに落ち着いていったからです。

「不安はずっと同じ強さではない」と実感した

このとき私が実感したのは、

不安が強くなったからといって、その状態がずっと続くとは限らない

ということでした。

もちろん、これは私自身の経験です。

パニック障害の症状や不安の出方は人によって異なります。

私の場合は、これまでのトレーニングでも、乗車前に不安が高まり、実際に動き始めると少しずつ落ち着くことがありました。

今回も同じでした。

頭では以前から分かっていたことでしたが、実際に経験すると、

「不安が強くなった瞬間に、すぐ回避しなくてもいい」

という感覚が少しずつ身についていきました。

混雑していても大丈夫だった

さらに、この日は車内が比較的混雑していました。

座席に座ることもできませんでした。

それまでの私なら、

「座れない」

ということ自体が不安材料になっていたかもしれません。

ところが、この日はそれほど気になりませんでした。

立ったままでも、特に問題なく過ごせました。

これは私にとって大きな経験でした。

それまで私は、

「座れる」

「空いている」

「すぐに降りられる」

といった条件が揃っている方が安心できると思っていました。

でも、

条件が少し悪くても大丈夫だった

という経験を積めたことで、

「必ずしも完璧な条件を用意しなくてもいい」

という感覚が少し生まれました。

復路では、また不安が出てきた

往路を終えたあと、今度は新百合ヶ丘から下北沢へ戻ります。

実は、私にとってはこちらの方が難しいと感じていました。

新百合ヶ丘を出発すると、いきなり長い駅間に入ります。

「これから長い区間に入る」

と分かっている状態でホームに立って電車を待つ。

すると、やはり不安が出てきました。

一度成功したからといって、常に平気なわけではありません。

「また不安が出てきた」

という感覚はありました。

今度は呼吸法を使った

そこで、今回は呼吸法を使いました。

意識を呼吸に向けて、ゆっくりと呼吸します。

しばらく続けていると、少しずつ気持ちが落ち着いてきました。

「これなら大丈夫」

と思える状態になりました。

私の場合、メモを書くことも呼吸法も、どちらも不安が強くなったときの対処法として役立ちました。

ただし、

「この方法を使えば必ず不安がなくなる」

というものではありません。

そのときの自分に合った方法をいくつか持っておくことが、私には大切でした。

座席を取られたことで、逆に気が楽になった

電車が到着して乗り込むと、ちょうど一つ座席が空いていました。

「座れる」

と思って座ろうとしたところ、遠くから走ってきた人に先を越されました。

正直、少し腹が立ちました。

でも、面白いことに、その瞬間から不安のことを考えなくなりました。

「なんで今来るんだよ」

という別の感情に意識が向いたからです。

結果として、不安から注意がそれました。

この経験から私は、

不安に意識を集中させ続けないことも大切なのかもしれない

と感じました。

意図的に別のことを考える場合もあれば、今回のように思いがけない出来事によって自然に意識がそれる場合もあります。

今回は「何も起きなかった」

そして、復路も無事に終わりました。

長い駅間を走っている間、不安が大きくなることはありませんでした。

振り返ってみれば、

「また何も起きなかった」

というだけのことです。

でも、パニック障害を抱えていた私にとって、この「何も起きなかった」という経験は、とても大切でした。

一度の成功で何かが完全に解決するわけではありません。

それでも、

「前にも大丈夫だった」

「今回も大丈夫だった」

という経験が少しずつ積み重なっていきます。

今回の快速急行への挑戦で分かったこと

今回のトレーニングから、私はいくつかのことを学びました。

1.「途中で降りられない」というイメージが不安を強くすることがある

私の場合、実際の乗車時間だけではなく、

「しばらく降りられない」

というイメージが不安を大きくしていました。

路線図を見たときに強く不安を感じたのも、そのためだったのだと思います。

2.不安が強くなった瞬間に、必ずしも回避する必要はない

今回も、下北沢の手前で「降りようか」と考えました。

でも、そこで回避せず、そのまま乗ってみました。

すると、発車後には私の場合、不安は少しずつ弱くなっていきました。

「不安が出た=乗れない」

ではありませんでした。

3.対処法を一つに絞らない

今回は、

  • メモを書く

  • 呼吸法を使う

  • 不安から意識を別の方向へ向ける

といった方法を経験しました。

どれか一つが万能というわけではありません。

その時々で使える方法をいくつか持っておくことが、私には役立ちました。

4.条件が悪くても大丈夫だった経験は自信になる

今回は座れませんでした。

それでも大丈夫でした。

この経験から、

「座れなければ乗れない」

「空いていなければ不安になる」

といった自分の中の条件を、一つずつ減らしていけるかもしれないと思うようになりました。

認知行動療法は「不安を消す練習」だけではなかった

当時の私は、認知行動療法を、

「不安をなくして、普通に電車に乗れるようになるための訓練」

のように考えていました。

でも、実際に取り組んでみると、少し違いました。

不安が出ること自体を完全になくすというより、

不安が出ても、どう行動するかを経験する

ことが重要だったのだと思います。

今回も、

「降りよう」

という考えが出ました。

それでも、私は乗り続けました。

その結果、

「不安があっても、そのまま乗っていられた」

という経験を得ることができました。

これは私にとって大きな意味がありました。

まとめ|「止まらない区間」にも乗れた

今回の快速急行への挑戦で、私は駅間時間の長い区間を経験しました。

乗る前には、

「しばらく降りられない」

ということが不安でした。

路線図を見ただけでも、実際以上に遠く感じました。

そして、下北沢の手前では、

「やめようか」

という考えも浮かびました。

それでも回避せずに乗ってみると、私の場合は発車後に不安が少しずつ弱くなりました。

さらに、混雑していて座れないという条件でも問題なく乗ることができました。

この経験から私が学んだのは、

不安が強くなった瞬間と、実際に起きることは必ずしも同じではない

ということです。

そして、

「不安があるから降りる」のではなく、「不安があってもどうするか」を考える

ことが、私にとって認知行動療法の大きな意味でした。

もちろん、これは私自身の治療経験です。

同じ方法がすべての人に適しているわけではありません。

それでも、私にとってこの快速急行への挑戦は、その後さらに長い区間へ挑戦していくための大切な一歩になりました。

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