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はじめに
パニック障害の認知行動療法では、「回避しないこと」が重要だと言われます。
しかし実際には、どれだけ頑張っていても、途中で電車を降りてしまったり、予定していた乗り物に乗れなかったりする日はあります。
私自身も、
「今日は無理だ……」
と途中下車したことが何度もありました。
以前の私は、そのたびに、
また悪化した
振り出しに戻った
もう一生治らないかもしれない
と極端に考え、自分を追い込んでいました。
ですが、長年の認知行動療法を通じてわかってきたのは、
本当に重要なのは「一度も回避しないこと」ではなく、回避した後にどう立て直すかだったのです。
今回は、私自身が実践して効果を感じた「回避してしまった時の対処法」を整理してみます。
1.「回避=失敗」と決めつけない
回避した直後は、強い不安や自己否定で頭がいっぱいになります。
私も、
やっぱり自分はダメだ
以前できていたのに後退した
また20年前に逆戻りだ
と何度も考えました。
しかし、あとから振り返ると、これは不安によって視野が極端に狭くなっている状態でした。
実際には、
駅までは行けた
ホームには立てた
一度は乗車できた
数分は耐えられた
など、「できている部分」も確かに存在していたのです。
2.「ゼロか100か」で考えない
認知行動療法では、0点か100点かで考えないことがとても大切でした。
たとえば私は、
ひかりに乗れたが途中下車した
飛行機には乗れたが強い不安だった
10分区間は成功したが非常停止で混乱した
という経験を何度もしています。
当時は「完全成功ではない」と感じていました。
しかし実際には、
以前より長時間乗れた
回避するまでの耐久時間が伸びた
パニック状態でも暴走しなかった
発作が来ても対処法を試せた
という前進がありました。
認知行動療法は、“少しずつ脳を書き換える作業”です。
だからこそ、小さな成功を無視しないことが重要でした。
3.回避後すぐに「再挑戦」を考えすぎない
回避した直後は、
「今すぐ克服しなきゃ」
「次こそ成功しなきゃ」
と焦りやすくなります。
ですが、この状態の脳はかなり疲弊しています。
私も、
帰省中ずっと交通手段を検索し続ける
乗車時間ばかり調べる
翌日のことを延々シミュレーションする
という状態になり、結果的に不安を増幅させていました。
カウンセリングでも、
“不安について考え続けること自体が、脳を疲れさせる”
と教わりました。
回避後はまず、
睡眠
食事
休息
気分転換
を優先し、「戦闘モード」から抜けることが大切でした。
4.「回避したから悪化した」のではなく、“回避が続く”と悪化する
ここはとても重要でした。
認知行動療法で本当に問題なのは、
一度回避したこと
ではなく、
その後ずっと避け続けること
だったのです。
私自身、
1回の失敗で「もう無理」と決めつける
数ヶ月〜数年トレーニングを止める
不安を感じる場面そのものを避ける
という流れで、症状を悪化させていました。
逆に、
回避しても翌週また挑戦する
難しいなら難易度を下げる
5分区間からやり直す
といった形で「流れを止めない」と、回復は再び進み始めました。
5.目標の下方修正は“後退”ではなく“再調整”
症状が悪化すると、
「以前できていたレベルまで戻らないと意味がない」
と思いがちです。
しかし、実際の認知行動療法では、不安階層表は固定ではありません。
その時の状態に合わせて、
区間を短くする
同伴者ありにする
各駅停車に戻す
途中下車前提で乗る
など、柔軟に調整してよいのです。
私も再発後は、
新幹線や飛行機ではなく、
まず「駅間5分の普通電車」からやり直しました。
最初は情けなく感じました。
ですが結果的には、この再調整が再回復への入口になりました。
6.“回避した自分”を責め続けない
回避直後に最も危険だったのは、
「また逃げた」
「情けない」
「普通の人なら平気なのに」
という自己否定でした。
自己否定が強くなると、
次回挑戦への恐怖
予期不安
回避衝動
がさらに増えていきます。
だから私は、後半になるほど、
今日は苦しかった
でもよく挑戦した
不安の中で最後まで頑張った
という視点を意識するようになりました。
これは甘えではなく、“次の挑戦を可能にするための回復作業”だったのだと思います。
7.「回避した経験」も、あとで武器になる
不思議だったのですが、過去に失敗した経験が、後年の支えになることもありました。
たとえば私は、
一度途中下車した経験
強い予期不安に負けた経験
飛行機を回避した経験
があったからこそ、
「また不安になっても、人は壊れない」
という感覚を少しずつ持てるようになりました。
もちろん、苦しい経験でした。
ですが、その苦しさを知っていたからこそ、
呼吸法
五感法
筋弛緩法
認知再構成
といった対処法の意味も、本当に理解できるようになったのです。
おわりに
認知行動療法を続けていると、「回避してしまう日」は必ずあります。
しかし、その1回だけで全てが無意味になるわけではありません。
むしろ大切なのは、
回避後に自分を追い込みすぎないこと
難易度を調整すること
小さくても再開すること
不安と付き合う技術を増やしていくこと
なのだと思います。
私自身、
「各駅停車しか乗れなかった時期」から始まり、
新幹線、飛行機、沖縄出張まで到達しました。
そして再発も経験しました。
それでも今振り返ると、回避も失敗も含めて、すべてが“認知行動療法の一部”だったのだと思います。
