体験記

【認知行動療法⑲】普通電車に再挑戦|呼吸法を使って「駅間5分」からやり直した体験

2026年5月19日

前回の記事では、10年ぶりに認知行動療法のカウンセリングを再開し、もう一度、普通電車からトレーニングを始めることになった経緯を書きました。

一度は新幹線や飛行機に乗れるようになった私ですが、飛行機を回避したことをきっかけに、再び電車に乗ることが難しくなっていました。

今回のスタート地点は、

普通電車の駅間5分

以前なら何でもない距離です。

それでも、当時の私には簡単なことではありませんでした。

そこで、カウンセリングで教えてもらった方法の一つである「カウント呼吸法」を使いながら、もう一度、電車に挑戦することにしました。

まずは「駅間5分」から再スタート

10年前に認知行動療法を始めたときも、最初は各駅停車でした。

そこから快速電車、新幹線、飛行機へと少しずつ進んでいきました。

だから今回も、

「まずは駅間5分から」

と決めました。

カウンセリングで作り直した不安階層表では、

  • 普通電車・駅間5分

  • 普通電車・駅間10分

  • 特急電車

  • 新幹線

  • 飛行機

という順番で、少しずつ挑戦していくことになりました。

以前の私なら、飛行機まで乗れるようになった経験があります。

しかし、今回はそこまで一気に戻ろうとは考えませんでした。

今できるところから、一段ずつやり直す。

それが今回の方針でした。

今回のトレーニングで使った「カウント呼吸法」

今回、特に意識したのが呼吸法です。

私が使ったのは、腹式呼吸をしながら秒数を数える方法でした。

具体的には、

3秒吸う → 7秒吐く

という呼吸を繰り返します。

私はこれを指折り数えながら行いました。

6回で約1分になります。

つまり、駅間5分なら、

約30カウント。

「あと何分だろう」と漠然と考えるのではなく、

「あと何カウント」

と具体的に区切れるところが、私には使いやすい方法でした。

また、呼吸を数えることで、電車の中で不安ばかりを考え続ける状態から、少し意識をそらすこともできました。

もちろん、これは私自身が使った方法です。

同じ方法が誰にでも合うとは限りません。

駅間5分で、早速不安が出てきた

最初の駅間5分。

電車が発車すると、早速、不安が出てきました。

心拍数が上がる感じがします。

そして、

「降りたい」

という感覚が出てきました。

以前なら、ここで不安そのものに意識が集中してしまっていたと思います。

しかし今回は、カウント呼吸法を始めました。

3秒吸う

7秒吐く

そして数える

これを繰り返します。

すると、少しずつ不安が遠のいていくように感じました。

不安が完全になくなったわけではありません。

それでも、

「不安が出てきても、こうやって対処できる」

という感覚が戻ってきました。

これは、私にとって大きな変化でした。

次は「駅間10分」に挑戦

駅間5分を経験した私は、次に駅間10分へ挑戦することにしました。

しかし、ここでは簡単にはいきませんでした。

目的の区間に入る2駅ほど手前から、予期不安が急に強くなってきたのです。

「もうすぐ10分の区間に入る」

そう考えると、焦りが出てきました。

そして、その焦りによって呼吸法が崩れてしまいました。

本来は、

3秒吸う

7秒吐く

と一定のリズムで続けるはずでした。

ところが、

「早く落ち着かなければ」

という気持ちが強くなり、いつの間にか単なる深呼吸のようになっていました。

当然、思うようには落ち着きません。

一度、電車を降りてしまった

結局、私は一度電車を降りました。

ホームで呼吸を整え、

「もう一度乗ってみよう」

と考えました。

しかし、再び電車を待っている間に不安が強くなってきました。

そして、その日は挑戦を断念しました。

回避です。

家に帰ってからは、かなり落ち込みました。

「またできなかった」

という気持ちがありました。

でも、少し冷静になって振り返ってみると、今回の失敗には一つ気づいたことがありました。

失敗したことで「修正点」が見えてきた

今回うまくいかなかったのは、

「駅間10分だから絶対に乗れない」

ということだけではありませんでした。

私の場合、

「早く不安をなくさなければ」

と焦ったことで、呼吸法そのものがうまくできなくなっていました。

それなら、次はそこを修正すればいい。

そう考えることができました。

以前の私は、失敗すると、

「自分には無理だった」

と考えがちでした。

しかし今回は、

「何がうまくいかなかったのか」

を見ることができました。

これは、再トレーニングを始めた私にとって大きな変化だったと思います。

再び駅間10分へ

その後、もう一度、駅間10分に挑戦しました。

ところが、この日は思わぬことが起きました。

目的の区間に入る直前、

電車が突然止まったのです。

駅間での非常停止でした。

「あと何分」が分からない状況になった

私にとって、これはかなり難しい状況でした。

通常の駅間10分なら、

「あと5分」

「あと3分」

というように、終わりまでの時間を考えることができます。

ところが、非常停止では、

いつ動き出すのか分かりません。

私にとっては、

「終わりが見えない」

ことが特に不安につながりました。

ここで私は、

「今日はここまで頑張ったのだから、駅間10分はやめて帰ろう」

と考えました。

一度は、そこで終わらせようとしたのです。

「ここで降りたら、また回避になる」

しかし、運転が再開した後、私は考え直しました。

以前の私は、

「怖いから避ける」

という行動を繰り返していました。

その結果、電車に乗ること自体が難しくなってしまいました。

だから今回は、

「ここで降りたら、また同じことを繰り返すのではないか」

と考えました。

もちろん、不安はあります。

それでも、

「このまま乗ってみよう」

と決めました。

カウント呼吸法を続ける

電車が動き始めても、心拍数は上がっていました。

私は席に座り、カウント呼吸法を続けました。

3秒吸う

7秒吐く

そして数える

最初はなかなか落ち着きません。

それでも続けていると、少しずつ呼吸が整ってきました。

そして、とうとう駅間10分を乗り切ることができました。

達成感はかなり大きかったです。

でも、それ以上に印象に残ったのは、

「途中で電車が止まっても、乗り切ることができた」

という経験でした。

「想定外」が起きても乗れた

今回の経験で、私自身が一つ気づいたことがあります。

これまでのトレーニングでは、

「予定どおりに電車が走る」

ことを前提に考えていた部分がありました。

しかし、実際の電車では、

  • 電車が遅れる

  • 信号で止まる

  • 非常停止する

  • 混雑する

といったことが普通にあります。

私にとっては、こうした「予定外の出来事」が起きても、その場で対処できたことに意味がありました。

「予定どおりに進まなくても、何とかできる」

という経験になったからです。

「笑顔」で少し気持ちが変わった

その後も駅間10分の反復練習を続けました。

ある日は少し熱っぽく、体もだるい状態でした。

ところが、この日は意外なことが起きました。

体がだるかったため、

「電車を降りて歩くより、電車の中で座っているほうが楽だ」

と思ったのです。

呼吸法も比較的安定していました。

そして、いつの間にか、

「降りたい」

と思わなくなっていました。

そのことに気づいた瞬間、私はマスクの下で自然に笑っていました。

すると、不思議なことに、さらに気持ちが落ち着いていくように感じました。

「体の状態や表情が、自分の気分にも影響することがあるのかもしれない」

と、そのとき私は思いました。

これは医学的な効果を確認したという話ではありません。

あくまで、私自身がそのとき感じたことです。

呼吸法だけに頼らなくてもいい

この経験から、私は呼吸法だけに頼る必要はないと考えるようになりました。

私の場合は、

  • カウント呼吸法

  • 筋弛緩法

  • 注意を別のことへ向ける

  • 表情を少し緩める

など、そのときに使える方法をいくつか持っておくことにしました。

以前は、

「この方法で不安を消さなければならない」

と考えすぎていたのかもしれません。

今は、

「使える方法をいくつか持っておいて、そのときに使えばいい」

くらいに考えています。

反復すると「また乗れるかもしれない」に変わっていく

駅間5分、そして駅間10分。

何度も繰り返しているうちに、少しずつ変化が出てきました。

最初の頃のような強い恐怖が、少しずつ減っていきました。

そして、

「また電車に乗れるかもしれない」

という感覚が戻ってきました。

まだ、

特急

新幹線

飛行機

そこまで考えることはできません。

でも、それでいいと思いました。

今の自分に必要なのは、以前の状態に一気に戻ることではありません。

今できることを一つずつ積み重ねること。

それだけで十分でした。

「早く元に戻りたい」と焦らない

以前の私は、

「早く元の状態に戻りたい」

と焦っていました。

新幹線や飛行機に乗れていたのだから、早くそこまで戻りたい。

そう考えてしまいます。

しかし、今回の再トレーニングで、それではうまくいかないことが分かりました。

今の自分ができるところから始める。

そして、できたら次へ進む。

難しければ、もう一度戻る。

その繰り返しです。

私にとって認知行動療法は、

一気に階段を駆け上がるものではなく、一段ずつ上がっていくもの

でした。

おわりに|まずは駅間5分、次に10分

今回の再トレーニングで、私が実感したことは、

「不安がなくなってから行動する」のではなく、「不安があっても対処しながら行動する」

ということでした。

駅間5分でも不安になりました。

駅間10分では、一度回避もしました。

途中で電車が非常停止するという想定外の出来事もありました。

それでも、もう一度挑戦して乗り切ることができました。

一度失敗したからといって、次も失敗するとは限りません。

逆に、一度成功したからといって、次も簡単にできるとは限りません。

だからこそ、

その日の自分にできるところから、また始めればいい。

今の私は、

駅間5分
そして駅間10分

そこから少しずつ先へ進んでいます。

以前は飛行機まで行けた私が、また各駅停車からやり直しています。

でも、以前と違うのは、

「一度できるようになった経験がある」

ということです。

その経験を土台に、もう一度積み上げていきたいと思っています。

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