体験記

【認知行動療法⑭】沖縄出張を乗り切り、飛行機が日常になった体験

2026年5月14日

認知行動療法を始めた頃、私は心理士さんと一緒に「不安階層表」を作りました。

各駅停車から始めて、快速電車、新幹線、そして飛行機へ。

その中で、私にとって最も大きな目標として設定していたのが、

「飛行機で沖縄へ出張する」

というものでした。

当時の私には、とても現実的な目標とは思えませんでした。

ところが、その後、

各駅停車
↓
快速電車
↓
新幹線こだま
↓
快速急行
↓
快速特急
↓
新幹線ひかり
↓
新幹線のぞみ
↓
飛行機(1時間~1時間半)

と、一つずつ経験を積み重ねてきました。

そして今回、いよいよ沖縄出張の日を迎えました。

私にとっては、これまでのトレーニングで積み重ねてきた経験を、実際の仕事の場面で試す大きな機会でした。

沖縄出張の日がやってきた

出発当日。

羽田空港へ向かいました。

これまでにも飛行機には乗っています。

それでも、今回の沖縄出張は少し違いました。

これまでは、

「飛行機に乗ること」

そのものが目的でした。

今回は、

「仕事で沖縄へ行く」

という明確な目的があります。

しかも、沖縄は私にとって長い間、「飛行機で行かなければならない場所」という意味でも特別な存在でした。

そのため、空港へ向かう段階から、いつもとは違う緊張感がありました。

羽田空港で「いよいよ本当に行くんだ」と実感

羽田空港に到着しました。

出張者全員分の荷物がまとめてカーゴ側へ運ばれているのを見たとき、

「いよいよ本当に行くんだ」

という実感が一気に湧いてきました。

これまで頭の中で考えていた「沖縄出張」が、現実の出来事になった瞬間です。

搭乗のために行列に並んでいると、緊張感も高まってきました。

もちろん、以前の私なら、ここでかなり苦しくなっていたと思います。

「やっぱり無理なのではないか」

「帰りたい」

そんな気持ちになっていたかもしれません。

しかし、今回はこれまでとは違いました。

これまでの経験を思い出した

私は、自分にこう言い聞かせました。

「これまで、乗ってしまえば何とかなってきた」

11年ぶりに乗った飛行機もそうでした。

羽田から札幌へ行ったときもそうでした。

新幹線のぞみに挑戦したときもそうでした。

乗る前には不安になる。

でも、実際に乗ってみると、少しずつ落ち着いてくる。

その経験を、私は何度も繰り返していました。

だから今回は、

「搭乗前に不安になるのは、これまでにもあったこと」

と考えることができました。

そして、

「今は先のことを考えず、今ここだけを見よう」

と意識しました。

「本当に無理なら、そのとき考えればいい」

もう一つ、以前とは違う考え方もできるようになっていました。

もし本当に体調が悪くなったら、そのときに申し出ればいい。

最初から、

「絶対に最後まで完璧にやり遂げなければならない」

と考えなくてもいい。

そう思えるようになっていました。

これは、私にとって大きな変化でした。

以前は、

「失敗してはいけない」

「絶対に乗らなければいけない」

と自分を追い込んでいました。

しかし今回は、

「できるところまでやってみよう」

という気持ちで搭乗することができました。

飛行機に乗った後は「実況中継」

そして、いよいよ飛行機に搭乗しました。

今回、私にとって意外なほど役に立ったのが、妻とのLINEでした。

私は搭乗後、自分の状態を妻に送っていました。

「今、こういう感じ」

「まだ少し緊張している」

「でも普通に座っている」

「今は大丈夫」

そんなふうに、自分の状態を文章にして送っていました。

あとから振り返ると、これは私にとってかなり意味のある方法でした。

自分の状態を言葉にすると、少し距離を置けた

不安を感じているときは、頭の中だけで考えていると、その感覚に意識が集中してしまいます。

しかし、それを言葉にしてみる。

「今、自分は緊張している」

「でも、普通に座っている」

「文章も普通に打てている」

そうやって整理すると、

「不安を感じている自分」と「その自分を観察している自分」

を少し分けて考えられるようになりました。

私の場合は、これがかなり助けになりました。

機内Wi-Fiも安心材料になった

このときは、機内Wi-Fiを利用することもできました。

これも私にとっては安心材料でした。

以前の私は、

「飛行機に乗ったら外界から完全に切り離される」

という感覚を持っていました。

しかし、スマートフォンで妻と連絡できる。

地上とのつながりを感じられる。

それだけでも、心理的な負担が違いました。

もちろん、Wi-Fiがあるから飛行機に乗れるようになったわけではありません。

それまでのトレーニングがあったからこそ、こうした安心材料も上手に利用できたのだと思います。

機内では「不安だけを見ない」

機内では、不安そのものを消そうとはしませんでした。

むしろ、

「不安を感じていても、別のことをする」

ことを意識しました。

私が持っていったものは、

  • 歴史小説

  • スマートフォン

  • マスク

  • アイマスク

  • GABAチョコ

  • 炭酸水

  • 手帳

などです。

今見ると、かなりいろいろ持ち込んでいます。

しかし当時の私にとっては、これらは単なる荷物ではありませんでした。

「これがあれば大丈夫」という安心材料

だったのです。

本を読む。

スマートフォンを見る。

LINEをする。

手帳に書く。

呼吸法や筋弛緩法を行う。

そうやって、一つのことに意識を集中させないようにしました。

「あと30分」と聞いて驚いた

飛行機に乗る前、私は約2時間半という時間をとても長く感じていました。

しかし、実際に乗ってみると、時間は少しずつ過ぎていきました。

本を読んだり、スマートフォンを見たり、手帳に書いたりしているうちに、

「沖縄到着まであと30分ほどです」

というアナウンスが流れました。

その瞬間、

「もう、あと30分なのか」

と思いました。

搭乗前には「2時間半」という時間がとても長く感じていたのに、実際にはいつの間にか残り30分です。

そして、そのとき私が感じたのは、

「少し眠いな」

ということでした。

「飛行機の中で眠い」と感じた

これは、私にとってかなり印象的な出来事でした。

以前の私は、飛行機の中では常に緊張していました。

「何か起きたらどうしよう」

「このまま降りられなかったらどうしよう」

そんなことばかり考えていました。

ところが今回は、

「眠い」

と感じていたのです。

それだけ、機内で普通に過ごせていたということです。

以前の自分から考えると、かなり大きな変化でした。

沖縄に到着して分かったこと

そして、飛行機は沖縄に到着しました。

ここでも一つ、以前とは違う感覚がありました。

これまで私は、

「沖縄は陸路で帰れない」

ということ自体を怖いと感じていました。

しかし今回は、

「飛行機が大丈夫なら、沖縄にいること自体は大丈夫だ」

と思えました。

つまり、

「沖縄に行くこと」そのものが怖かったわけではなく、

私の場合は、

「飛行機に乗って沖縄まで行くこと」

が大きな課題だったのです。

その課題を一つ乗り越えたことで、沖縄という場所への見方も変わりました。

復路で思わぬトラブル

もちろん、すべてが順調だったわけではありません。

復路では、機材故障によって出発が約3時間遅れることになりました。

しかも、代替機材は「狭い機材になる」と説明されました。

これは、以前の私ならかなり気になる状況です。

  • 搭乗時間が長くなる

  • 機内が狭い

  • 閉塞感がある

  • 疲労がたまる

  • 腰にも負担がかかる

不安につながりそうな条件がいくつも重なりました。

それでも私は、以前ほど動揺しませんでした。

実際に乗ってみると、想像とは違った

代替機材に乗ってみると、意外にも座席はそれほど気になりませんでした。

ここで、これまでのトレーニングで何度も経験してきたことを思い出しました。

「乗る前に想像していたことと、実際に起こることは違うことがある」

ということです。

搭乗前には、

「狭くて大変かもしれない」

と思っていました。

ところが、実際には普通に座ることができました。

そして、飛行機が離陸すると――

私は眠ってしまいました。

気がついたら着陸態勢だった

目を覚ましたときには、もう着陸態勢に入っていました。

私は少し驚きました。

以前の自分なら、飛行機の中で眠るなど考えられませんでした。

それが今は、

「飛行機の中で普通に眠っていた」

のです。

思い返せば、パニック障害になる前の私は、飛行機の中でよく眠っていました。

その感覚が少し戻ってきたような気がしました。

沖縄出張で一番大きかった変化

今回の沖縄出張で、私が一番大きな変化だと感じたのは、

「飛行機に乗れたこと」だけではありません。

飛行機に乗っても、

本を読める。

スマートフォンを使える。

妻にLINEを送れる。

眠れる。

到着時間が少し遅れても対応できる。

そして、復路で3時間遅れても、実際に飛行機に乗ることができる。

こうした一つ一つの経験によって、

「飛行機に乗ること」が特別なイベントではなくなってきた

ことです。

「完全に克服した」とは考えなかった

とはいえ、今回の経験だけで、

「飛行機を完全に克服した」

とは考えませんでした。

予期不安が出ることはあります。

長距離移動なので、身体的な疲労もあります。

年齢を重ねれば、体力面の負担も変わってきます。

だからこそ、この頃から私は、

心だけでなく、身体のコンディションも大切なのではないか

と考えるようになりました。

睡眠。

体力。

疲労管理。

こうした日常生活の土台も、移動への向き合い方に関係していると感じるようになったのです。

「不安がなくなった」のではなく、「行動できるようになった」

今回の沖縄出張を終えて、一番伝えたいのは、

「不安がなくなったから沖縄へ行けた」わけではない

ということです。

出発前には緊張しました。

搭乗前にも緊張しました。

それでも、

「これまで乗ってきた」

「まず今ここだけを見る」

「必要なら、そのとき対応すればいい」

と考えながら、一歩ずつ進みました。

そして、実際に飛行機に乗ってみると、途中から眠くなるほど落ち着くことができました。

私の場合は、

「不安がある状態でも行動できる」

という経験を積み重ねたことが、大きな変化につながったのだと思います。

各駅停車から沖縄まで

認知行動療法を始めた頃の私は、各駅停車に乗ることにも苦労していました。

ホームで引き返したこともあります。

電車に乗るかどうかで何十分も悩んだこともあります。

それが、

快速電車

新幹線

快速急行

快速特急

新幹線

飛行機

そして、

沖縄出張

振り返ってみると、一つ一つの挑戦は小さなものでした。

しかし、その小さな経験が積み重なったことで、

「飛行機で沖縄へ出張する」

という、かつては想像するだけで難しかったことを実際に経験できました。

沖縄出張は「ゴール」ではなく「大きな一歩」

今回の沖縄出張は、私にとって大きな達成感がありました。

ただし、これを「すべて克服した」というゴールにはしませんでした。

むしろ、

「ここまで来ることができた」

という一つの区切りです。

そして、ここからさらに、

「必要なときには新幹線や飛行機を使う」

「移動することを特別なことにしない」

という生活につなげていく。

そのための大きな一歩だったのだと思います。

認知行動療法を始めたときには、沖縄出張など考えられませんでした。

それでも、各駅停車から一つずつ経験を積み重ねてきました。

今回の経験を通じて私は、

「人は、いきなり大きく変わらなくても、一歩ずつなら前へ進める」

ということを、自分自身の経験として実感しました。

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