体験記

【認知行動療法②】“新幹線”という象徴|恐怖の名前を越える日

2026年5月6日

今回のトレーニングメニューは、新幹線こだま号での移動でした。

不安階層表に従い、各駅停車、快速電車と段階的に進めてきました。
新幹線の中では最も駅間時間が短い”こだま”にチャレンジします。
時間だけを見れば、すでに新幹線と同程度の駅間時間は経験済みです。

それでも、「新幹線」という言葉には特別な重さがありました。

“名前”が持つ恐怖

これまで乗ってきた電車と、新幹線。
乗客としては、やることは同じです。

乗る。
しばらく降りられない。
目的地に着く。

それだけです。

しかし、私の中では違いました。

新幹線は「逃げられない乗り物」の象徴でした。

過去の失敗や、乗れなくなっていった記憶。
それらがすべて、この言葉に集約されているような感覚がありました。

そのため、トレーニング当日の朝から、軽い緊張と疲労感がありました。

乗車前から始まる戦い

駅に向かう段階から、すでに気持ちは落ち着いていませんでした。

「本当に大丈夫か」
「途中でダメになったらどうする」

そうした考えが、頭の中を行き来します。

これまでのトレーニングで分かってきたことがあります。

本当にきついのは、“乗ってから”ではなく“乗るまで”であること。

今回もまさにその通りでした。

車内でも消えない違和感

新幹線に乗り込み、席に座りました。

しかし、不安はすぐには消えませんでした。

車内は広く、快適なはずです。
それでも、どこか閉塞感を覚えました。

発車前、トイレに立ちました。

そこはさらに狭く、閉じた空間でした。

「この状態で本当に大丈夫なのか」

そう思いながら席に戻りました。

呼吸法が“効いた”瞬間

席に座り、呼吸法を始めました。

吸って、吐いて。

最初は落ち着きませんでした。

しかし、1分ほど続けると、少しずつ変化が出てきました。

さっきまで意識の中心にあった不安が、少し後ろに下がった感覚です。

「いけるかもしれない」

そう思えるようになりました。

東京駅を出発する頃には、気持ちはかなり落ち着いていました。

“何も起きない”という成功

発車後は、驚くほど安定していました。

あれほど警戒していたのに、何も起きません。

強い不安も来ません。

むしろ、「こんなものか」と思うほどでした。

この体験は大きな意味を持っていました。

不安が予測している未来は、必ずしも現実にはならない。

それを、新幹線という舞台で確認できたのです。

復路で現れる“予期不安”

往路を終え、復路に向かいました。

ここで、新たな不安が出てきました。

新大阪から京都までの区間。
これが、往路の東京〜品川より長いのです。

「最初の区間が長い」

この事実が、不安を呼び起こしました。

さらに、ホームで待っている時間がそれを増幅させました。

やはり怖いのは、発作そのものではなく、予期不安でした。

発車前に整える

乗車後、すぐに呼吸法を始めました。

今回は少し長めに、3分ほど。

すると、発車前には気持ちが落ち着いてきました。

「これなら大丈夫だ」

そう思える状態でスタートを迎えることができました。

“一人ではない”という感覚

発車後は、往路と同じように安定していました。

ふと、周囲を見渡しました。

何気ない光景です。

スーツ姿の人、家族連れ、旅行者。

そのとき、こんなことを思いました。

「この中にも、自分と同じように不安を抱えている人がいるかもしれない」

パニック障害は、日本では100人に1〜2人程度の割合で発症するそうです。

であれば、この車両の中に一人くらい自分と同じ気持ちの人がいるのかな。

そう思うと、不思議と気持ちが軽くなりました。

今回の気づき

今回のトレーニングで分かったことがあります。

・不安のピークは長く続かない
・呼吸法は確実に効果がある
・本当に苦しいのは“予期不安”である

そして何より、

恐怖の象徴だった新幹線に乗れたこと

これは、自分にとって大きな転機でした。

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