生活は、一見すると落ち着いていました。
毎日、同じ道を歩いて通勤し、
決まった席に座って仕事をする。
電車には乗らない。
遠くへは行かない。
それでも、
「何とか踏みとどまっている」と言えなくもない状態でした。
ただ、
その裏で、別の問題が静かに大きくなっていました。
見えてきた現実
生活範囲を極端に狭めたことで、
日常は維持できていました。
その代わりに支払っていたのは、
「お金」と「無理」でした。
職場の近くに借りたアパートは、
都心ということもあり、家賃は高額でした。
それに見合う環境かといえば、
決してそうではありませんでした。
古い建物で、
清潔とは言えない状態。
ある日、床下でネズミが死に、
部屋中にハエが発生したこともありました。
窓を開けても、
空気は変わらない。
それでも、
「ここにいれば通勤できる」
それだけで選んだ場所でした。
家族への影響
一番つらかったのは、
その環境に妻と子どもを巻き込んでいることでした。
まだ小さな子ども。
その世話をしながら、
この環境で生活している妻。
文句を言われることはありませんでしたが、
明らかに負担は大きかったと思います。
限界の判断
ある時、はっきりと思いました。
「このままでは続かない」
経済的にも、生活環境としても、
そして精神的にも。
退職という選択
最終的に、
退職を考えるようになりました。
次の仕事の見通しはありません。
この状態で働けるのかという不安もありました。
それでも、
このまま続けることの方が、
現実的ではないと感じていました。
上司に伝えた日
意を決して、上司に話をしました。
正直に、
今の状態と、続けるのが難しいことを伝えました。
迷惑をかけているという気持ちが強く、
申し訳なさの方が大きかったと思います。
上司は、
静かに話を聞いてくれました。
そして、しばらくしてから、
こう提案してくれました。
「住む場所を変えて、もう一度やってみないか」
提示された選択肢
職場の宿舎を紹介してくれました。
今よりも家賃は安くなる。
ただし、
通勤には電車を使う必要がある。
時間にして、約20分。
問題はそこでした。
電車に乗れるのか。
これまで避け続けてきたことです。
それでも、
この提案はありがたいものでした。
正直、自分はもう
「戦力になっていない」と思っていました。
それでも、
残る選択肢を提示してくれた。
その事実が、
少しだけ気持ちを動かしました。
妻の反応
妻に話をすると、
迷うことなく賛成してくれました。
むしろ、
前向きに受け止めてくれました。
その反応に、
少し救われた気がしました。
再挑戦の条件
やることはシンプルでした。
電車に乗る。
それだけです。
駅と駅の間は、約2分。
それを積み重ねて、
20分。
気持ちの変化
この時、
久しぶりに思えたことがあります。
「やってみよう」
これまでの数年間は、
できないことが増えていく一方でした。
でもこの時は、
少しだけ逆の方向を見ていました。
小さな希望
まだ何もできていません。
結果も出ていません。
それでも、
「もう一度やってみる」という選択をしたこと自体が、
自分にとっては
大きな一歩だったと思います。
振り返って思うこと
あの時、
もし退職していたら、
違う人生になっていたかもしれません。
もちろん、
それが悪いとは限りません。
でも、
あの提案があったからこそ、
もう一度、
前に進む選択ができました。
限界だと思ったとき、
必ずしも選択肢が一つとは限らない。
そう気づいた出来事でした。
そして、
症状改善に本格的に取り組むため、
もう一度治療と向き合うことになります。
