マイクロ法人を設立すると、「自宅を法人の社宅にできないか」と考える人も多いと思います。
私自身も、定年退職後にマイクロ法人を設立する計画の中で、自宅を法人の社宅にする方法を検討しました。
しかし、現在の自宅には住宅ローンが残っています。
住宅ローン契約との関係を考えると、自宅全体を法人に賃貸して社宅化する方法は、事前に金融機関への確認が必要です。
私は電話での確認が苦手ということもあり、社宅化はいったん見送ることにしました。
そこで改めて検討したのが、
「自宅の一部をマイクロ法人の事務所として使用し、その部分について法人から家賃を受け取る」
という方法です。
今回は、私が2032年8月の定年退職時にマイクロ法人を設立することを前提に、自宅の一部を法人事務所として利用した場合、どの程度の経費を法人に移せるのかを概算してみます。
この記事の結論
先に結論から書きます。
私の自宅は延床面積74.04㎡です。
そのうち、元子供部屋である9.62㎡を、2032年8月のマイクロ法人設立後に法人事務所として専用使用することを想定しています。
この場合、
9.62㎡ ÷ 74.04㎡ = 約13.0%
となり、自宅の約13%を法人事務所として使用する計画です。
2032年時点の条件を現在と大きく変わらないと仮定して概算すると、事務所部分に対応する減価償却費、固定資産税、住宅ローン利息、火災共済などの年間必要経費は17~20万円程度になると見込んでいます。
これらは、法人の経費になるというより、個人が法人に事務所を貸し付けることで発生する不動産所得の必要経費として考えるものです。
一方、法人から個人へ支払う事務所家賃は、法人側では事業に必要な経費として計上できます。
私の場合、ライフプラン上の試算では、
月2万円程度の事務所家賃
を一つの候補としています。
月2万円なら年間家賃は24万円です。
仮に事務所部分の必要経費を年間18万円とすると、個人側の不動産所得は概算で、
24万円-18万円=6万円
となります。
今回の検討から分かったのは、自宅全体を法人の社宅にしなくても、自宅の一部を実態のある法人事務所として使用することで、法人の事業経費を適切に計上できる可能性があるということです。
なぜ自宅を「社宅」ではなく「事務所」にするのか
マイクロ法人で自宅を活用する方法には、大きく分けて2つあります。
一つは、
自宅を法人に貸して、法人から役員である自分に社宅として貸し戻す方法
です。
もう一つが、
自宅の一部を法人の事務所として法人に貸す方法
です。
社宅化には大きなメリットが期待できる一方、自宅全体を法人に賃貸することになるため、住宅ローン契約との関係などを確認する必要があります。
一方、事務所化なら、
「自宅のうち、この部屋だけを法人の事業に使用しています」
という形にできます。
私の場合は、こちらのほうがシンプルで、実態にも合わせやすいと考えました。
私の自宅を事務所化すると使用割合は13%
私の自宅の条件は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 延床面積 | 74.04㎡ |
| 法人事務所 | 9.62㎡ |
| 事業使用割合 | 約13.0% |
| 建物取得価格 | 1,500万円 |
| 土地取得価格 | 3,480万円 |
| 固定資産税 | 年間148,300円 |
| 火災共済 | 年間15,600円 |
事務所として使用するのは、元子供部屋の9.62㎡です。
計算すると、
9.62㎡ ÷ 74.04㎡ = 約13.0%
です。
このように、独立した一室を法人事務所として使用するのであれば、リビングの一角を仕事に使う場合などと比べて、使用面積を説明しやすくなります。
もちろん、単に「部屋を事務所と呼べばよい」ということではありません。
実際に法人の業務を行い、法人の机、パソコン、書類などを置くなど、事務所として使用している実態を作ることが重要です。
自宅の費用はどこまで経費にできるのか
ここで重要なのは、
「自宅にかかった費用の13%を全部、法人の経費にできる」わけではない
ということです。
今回の仕組みでは、
個人所有の自宅の一部を法人に貸し付ける
ことになります。
そのため、お金の流れを法人側と個人側に分けて考える必要があります。
法人側
法人が個人に支払う事務所家賃
↓
法人の経費
個人側
法人から受け取った事務所家賃
↓
個人の不動産所得
そして個人側では、貸し付けた部分に対応する固定資産税、減価償却費、損害保険料、修繕費などを必要経費として差し引くことができます。
国税庁も、不動産所得について「総収入金額-必要経費」で計算し、固定資産税、損害保険料、減価償却費、修繕費などを必要経費として挙げています。
固定資産税は13%を目安に按分
私の固定資産税は年間148,300円です。
事務所使用割合を13%とすると、
148,300円 × 13% ≒ 19,300円
となります。
つまり、年間約1.9万円が事務所部分に対応する固定資産税の目安になります。
国税庁も、業務用資産に係る固定資産税は必要経費に算入できるとしています。
ただし、これはあくまで個人側の不動産所得における必要経費です。
法人の固定資産税として計上するわけではありません。
ここは重要なポイントです。
火災保険ではなく「火災共済」でも対象になるのか
私の場合、民間の火災保険ではなく、共済組合の火災共済に加入しています。
掛金は年間15,600円です。
13%で按分すると、
15,600円 × 13% = 約2,000円
です。
このような損害保険料等については、貸付部分に対応する金額を必要経費として考えることができます。
国税庁も、事務所兼住宅について、火災保険料、固定資産税、修繕費などを使用面積などの適切な基準で按分する考え方を示しています。
ただし、共済の中に積立部分などが含まれている場合には、その部分を差し引いて経費計上します。
したがって、実際に法人事務所化するときには、火災共済の掛金の内訳を確認する必要があります。
建物の減価償却費も関係する
土地は減価償却できませんが、建物は減価償却の対象になります。
私の自宅は、
- 土地:3,480万円
- 建物:1,500万円
で取得しています。
仮に木造住宅で法定耐用年数を22年として単純化すると、
1,500万円 ÷ 22年 ≒ 68.2万円
が年間減価償却費の目安になります。
その13%を事務所部分とすると、
約8.9万円
です。
住宅ローンの利息も事務所部分を考慮できる
住宅ローンの元本返済は経費にはなりません。
一方、事業用部分に対応する住宅ローンの利息については、必要経費として扱える可能性があります。
私の住宅ローンは変動金利で、現在の金利は1.224%です。
現在の残高を約3,943万円として単純計算すると、年間利息は約48万円になります。
ただし、元本を返済していくため、2032年には残高も利息も現在より少なくなると考えています。
2032年のローン残高を概算すると約3,170万円程度になるため、現在の金利がそのまま続くと仮定すれば、
年間利息:約39万円
程度が一つの目安です。
その13%なら、
約5万円
が事務所部分に対応するローン利息の概算になります。
2032年の事務所関連費用を概算してみる
ここまでの数字を使って、2032年の目安を作ってみます。
| 項目 | 事務所部分の年間経費・必要経費 |
| 建物減価償却費 | 約8.9万円 |
| 固定資産税 | 約1.9万円 |
| 火災共済 | 約0.2万円 |
| 住宅ローン利息 | 約5.0万円 |
| その他の費用 | 約1~4万円 |
| 合計 | 約17~20万円 |
これはあくまで現在の条件をもとにした概算です。
特に減価償却費や住宅ローン利息は、2032年には現在と異なります。
住宅ローン利息は最近の金利上昇が続けば2032年でも減っていないかもしれませんが、未来はわかりません。
そのため、私のライフプランでは、
自宅事務所に対応する年間経費:約18万円
程度を一つの目安として置いています。
法人から個人へ事務所家賃を支払う
ここで法人と個人の間に賃貸借関係を作ります。
イメージは、
個人所有の自宅
↓
9.62㎡を法人事務所として法人に賃貸
↓
法人が個人へ事務所家賃を支払う
というものです。
例えば、月2万円なら、
2万円 × 12か月 = 年間24万円
です。
法人側では、この24万円が事務所家賃として経費になります。
一方、個人側では24万円が不動産収入となります。
そこから、事務所部分に対応する必要経費を差し引きます。
国税庁も、不動産所得は「総収入金額-必要経費」で計算するとしています。
月2万円なら個人の不動産所得はどうなる?
先ほどの概算で、事務所部分の必要経費を年間18万円とします。
法人からの家賃が年間24万円なら、
24万円-18万円=6万円
です。
つまり、個人側に残る不動産所得は概算で6万円になります。
一方、法人側では24万円の事務所家賃を経費にできます。
このように考えると、
法人側の経費を増やしながら、個人側では関連する必要経費を差し引く
という構造になります。
ただし、これは「24万円が非課税になる」という意味ではありません。
法人では家賃が損金になる一方、個人では不動産所得が発生します。
法人と個人を合わせた家計全体で税負担を考えることが重要です。
家賃を高くすれば節税になるわけではない
ここはマイクロ法人で自宅を活用する際に、特に注意したいところです。
例えば、
- 月2万円 → 年24万円
- 月3万円 → 年36万円
- 月5万円 → 年60万円
と家賃を上げれば、法人側の経費は増えます。
しかし、それと同時に個人側の不動産収入も増えます。
そのため、
「法人に高い家賃を払わせれば節税できる」
という単純な話ではありません。
また、法人と役員個人との取引だからといって、金額を自由に決めてよいわけでもありません。
実際の使用状況や周辺の賃料水準などを踏まえて、合理的な賃料設定をする必要があります。
私の場合は、2032年のライフプラン上、
月2万円程度
を一つの試算値として置いています。
電気代や通信費等も経費計上できる
事務所として実際に使用するのであれば、電気代やインターネット料金などについても検討できます。
例えば年間の電気代が18万円で、単純に13%を使用面積割合とすれば、
18万円 × 13% = 2.34万円
です。
ただし、電気代や通信費は「面積だけ」で判断する必要はありません。
使用時間、使用実態、通信の利用状況など、より合理的な基準があれば、それを使うことも考えられます。
国税庁も、家事関連費について、使用面積、使用時間、使用回数などの適切な基準によって業務分と家事分を按分する考え方を示しています。
重要なのは「節税額」より「実態」
ここまで計算すると、
「年間20万円程度の経費なら、たいした節税にならないのでは?」
と思うかもしれません。
私も、この自宅事務所だけで大きな節税をしようとは考えていません。
むしろ重要なのは、
実際にマイクロ法人の事業を行う場所を確保し、そのために必要な費用を適切に法人経費へ反映すること
だと考えています。
例えば、
- 事務所家賃
- パソコン
- プリンター
- デスク&チェア
- 電気代&通信費
- 会計ソフトやレンタルサーバ
- 法人の銀行関連費用
- 税務申告関連費用
- 事業に必要な備品や消耗品
などがあります。
自宅事務所は、その中の一つにすぎません。
自宅事務所化のメリットは年間数万円程度の節税だけではない
今回の試算から、私が考えていることは、
マイクロ法人の自宅事務所化そのものを、大きな節税策として考えない
ということです。
私のケースでは、事務所家賃を月2万円とした場合、法人側では年間24万円の経費になります。
個人側では事務所部分に対応する減価償却費、固定資産税、ローン利息、共済などを差し引くことで、課税される不動産所得を抑えられます。
しかし、家計全体で見れば、税負担の軽減額は年間数万円程度になる可能性があります。
それでも、
「実際に法人の仕事をしている自宅の一室を、適切な賃料で法人に貸す」
のであれば、無理なく法人経費を作れる方法です。
私はこの「無理のない経費計上」という考え方を、マイクロ法人では大切にしたいと思っています。
まとめ|自宅全体を社宅にしなくても法人経費は作れる
今回の検討をまとめると、次のようになります。
| 項目 | 私の想定 |
| マイクロ法人設立 | 2032年8月 |
| 自宅延床面積 | 74.04㎡ |
| 法人事務所 | 9.62㎡ |
| 事業使用割合 | 約13.0% |
| 想定事務所家賃 | 月2万円 |
| 法人側の年間家賃経費 | 約24万円 |
| 個人側の事務所関連必要経費 | 約18万円 |
| 個人の不動産所得 | 約6万円 |
| 年間の節税効果 | 約4.5万円 |
もちろん、2032年になれば改めて計算し直す必要があります。
また、法人と個人の間で賃貸借契約を結ぶ場合には、賃料の妥当性や実際の使用状況を説明できるようにしておくことも重要です。
家事関連費については、業務上必要な部分を明確に区分できることが重要で、国税庁も業務部分と家事部分を合理的な基準で按分する考え方を示しています。
私の場合は、住宅全体を法人の社宅にする方法よりも、
「自宅の一室を、実際に法人の事務所として使う」
というシンプルな方法のほうが、自分のマイクロ法人には合っていると考えています。
次に検討したいのが「退職金の法人運用」
そして、この自宅事務所化には、もう一つ意味があります。
私は2032年8月の定年退職時にマイクロ法人を設立し、退職金を法人に役員借入金として貸し付け、法人で運用する方法についても以前から検討していました。
ただ、これまでは一つの問題がありました。
法人で資産運用を行えば、当然ながら運用益が発生します。
一方で、法人には法人税がかかります。
そこで、
「法人の運用益に対して、どの程度の法人経費を計上できるのか」
が重要になります。
これまでの検討では、法人の運用益と損益通算できる規模の経費を、無理なく、かつ合理的に計上できるのかについて十分な見通しが立っていませんでした。
そのため、退職金を法人に入れて運用する構想については、いったん保留していました。
しかし今回、自宅の9.62㎡を法人事務所として使用する方法を具体的に検討したことで、
- 事務所家賃
- 減価償却費
- 固定資産税
- 住宅ローン利息
- 火災共済
- 電気・通信費など
について、合理的な範囲で経費計上できる可能性が見えてきました。
今回の試算では、年間約18万円の事務所部分の経費を見込んでいます。
さらに法人から個人へ支払う事務所家賃を月2万円とした場合、法人側では年間24万円の経費となります。
これによって、これまで見通しを持てなかった「法人の運用益と経費をどの程度まで損益通算できるのか」について、具体的な数字を使って検討できるようになりました。
そこで次回の記事では、いよいよ、
「退職金をマイクロ法人に役員借入金として入れ、法人で資産運用する方法」
について詳しく整理します。
退職金をすべて個人で運用するのではなく、法人への役員借入金として活用することで、法人の資産運用と個人への資金還流をどのように設計できるのかを検討していきます。

