私は2032年8月の定年退職時にマイクロ法人を設立する予定です。
定年退職時には退職金を受け取ることになりますが、その資金をすべて個人で運用するのではなく、一部をマイクロ法人に役員借入金として貸し付け、法人で資産運用する方法を検討しています。
法人で資産運用する場合、当然ながら運用益に対して法人税等がかかります。
そこで重要になるのが、
法人にどの程度の必要経費が発生するのか
という点です。
私の場合、マイクロ法人の事務所を自宅の一部に設けることを想定しています。
自宅の一部を法人事務所として使用すれば、条件を満たす費用について、事業使用部分を合理的に按分して法人の必要経費とすることが考えられます。
今回、この経費について具体的に試算したことで、法人で退職金を運用する方法についても、以前より現実的な検討ができるようになりました。
そこでこの記事では、
「退職金をマイクロ法人に役員借入金として入れ、法人で資産運用する」
という方法について整理します。
さらに、法人で運用する商品として米国ETFだけでなく、インデックスファンドも検討する理由についても説明します。
この記事で検討する「法人版NISA」とは?
私が考えている仕組みは、次のようなものです。
もちろん、法人の運用益そのものが非課税になるわけではありません。
ただし、法人では運用益だけを切り離して課税されるのではなく、法人全体の所得計算の中で、損金算入できる必要経費を考慮します。
そのため、たとえば運用益が50万円で、損金算入できる必要経費が60万円あれば、単純化すると運用益を上回る経費によって課税所得はゼロになります。
さらに、法人から個人も役員報酬ではなく借入返済金のため課税対象にはなりません。
この記事では、
「退職金を法人に貸し付け、法人で運用し、法人に実際に発生する必要経費を考慮しながら資産形成を行う」
という仕組みを便宜上、
法人版NISA
と呼んでいます。
もちろん、法人にNISA制度があるわけではなく、税制上の正式な制度ではありません。
あくまで、私自身の資産運用上の考え方を表したものです。
なぜ退職金を「役員借入金」にするのか
では、なぜ退職金を法人への出資ではなく、役員借入金として入れるのでしょうか。
例えば、定年退職時に退職金を受け取り、そのうち1,000万円をマイクロ法人に貸し付けるケースを考えます。
個人から法人に1,000万円を貸し付けると、法人側では、
役員借入金1,000万円
として処理します。
これは法人の売上や利益ではありません。
法人から見ると、
「役員から借りたお金」
だからです。
法人は、その借入金を使って投資信託などの金融資産を購入します。
そして将来、法人から個人へ資金を戻す場合には、実際に存在する役員借入金を返済するという方法が考えられます。
これは役員報酬や配当とは性質が異なります。
ただし、当然ながら、実際に資金を貸し付けた事実があり、帳簿や資金移動を適切に管理していることが前提です。
法人の必要経費が重要になる理由
法人で資産運用する場合、運用益が発生すれば法人の所得計算に影響します。
一方、法人には事業を行うための必要経費も発生します。
この両方を法人全体の所得計算の中で考えられることが、今回の仕組みのポイントです。
私の場合、その経費として注目しているのが自宅事務所です。
自宅の一部をマイクロ法人の事務所にする
私の自宅の延床面積は、
74.04㎡
です。
そのうち、元子供部屋である、
9.62㎡
を法人事務所として専用使用することを想定しています。
面積割合は、
9.62㎡ ÷ 74.04㎡ = 約13.0%
です。
つまり、自宅全体の約13%を法人事務所として使用する計画です。
この事務所部分について、事業との関連性が認められる費用を合理的な基準で按分することを考えています。
現在の条件は、
- 延床面積:74.04㎡
- 事務所面積:9.62㎡
- 事務所割合:約13.0%
- 住宅ローン金利:1.224%
- 固定資産税:年間148,300円
- 防衛省生活協同組合の火災共済:年間15,600円
- 住宅ローン控除:終了済み
です。
2032年時点で条件が大きく変わらないと仮定して概算すると、固定資産税、減価償却費、住宅ローン利息、火災共済などの事務所対応分について、
年間17~20万円程度
の経費が発生する可能性があります。
さらに、法人から個人へ事務所家賃を支払う方法も検討しています。
私の場合、ライフプラン上の候補として、
月2万円
を想定しています。
年間では、
2万円 × 12か月 = 24万円
です。
したがって、現時点の試算では、
その他の事務所関連経費:17~20万円程度
+
事務所家賃:24万円
=
年間41~44万円程度
が、法人側で発生する経費の一つの目安になります。
もちろん、これは2032年の実額を保証するものではありません。
また、すべての自宅関連費用を単純に13%で経費にできるという意味でもありません。
費用ごとに事業との関連性を確認し、合理的な按分方法を設定する必要があります。
自宅事務所の経費計算については、別記事で詳しく試算していますので、必要に応じてそちらも参照してください。
法人の運用益と必要経費をどう考えるか
ここで、法人の資産運用について単純な例を考えてみます。
例えば、
法人の運用益:50万円
に対して、
法人の必要経費:40万円
が発生したとします。
単純化すれば、
50万円-40万円=10万円
となります。
このように、法人の運用益だけを見るのではなく、法人の事業に実際に必要な経費も含めて法人全体の所得を考えることが重要です。
法人ではインデックスファンドを運用する
個人の特定口座での退職金運用は、米国のカバードコールETFを中心としたポートフォリオで行います。
一方、法人で米国ETFを運用する場合には、個人の特定口座とは異なる問題があります。
例えば、
- 日本法人側での課税(概ね30%)
- 外国税の取り扱い(外国税額控除の手続きが複雑)
- 分配金の経理処理(源泉徴収された外国税や為替差損益などを適切に仕訳して帳簿に記帳)
- 為替換算(取引時点の仲値で外貨建取引を円換算して記帳する必要があるほか、決算期末には期末レートで外貨建資産の評価替えを行い、為替差損益を計上する作業が必須)
- 売買損益の管理(特定口座のように証券会社による年間取引報告書の発行がない)
- 法人決算での処理(米国ETFは「投資有価証券」等の資産として外貨建てで計上され、期末評価や法人税申告書(別表)への反映など、一連の法人決算プロセスが不可欠)
などです。
そのため、
特定口座で検討した退職金運用ポートフォリオをそのまま使えばよい
という単純な話ではありません。
この作業のために数十万円もかけて税理士等と契約を結ぶとなると、
マイクロ法人など設立する必要があるのかというそもそも論になってしまいます。
あくまで
高価な契約を要する専門家に頼らずに
60代以降の自分自身が会計ソフトを使って
定年後自由な生活を満喫する片手間で対応できる業務量
に抑えなければなりません。
そこで私は、法人の運用対象として、
インデックスファンド
を運用することにしました。
ここで重要なのは、私が退職金運用の目的を変更したわけではないということです。
私の基本方針はあくまで、
元本をできるだけ毀損しない範囲でインカムを最大化する
です。
法人でインデックスファンドを運用する理由は、
「必要なときだけ売却できるから」
ではありません。
法人で米国ETFを保有する場合の税務・経理上の負担などを考えると、
「法人口座では、米国ETFよりインデックスファンドのほうが合理的なのではないか」
という考えに至ったからです。
個人ではインカムを重視してカバードコールETFなどを選んでも、法人では、
税負担+経理負担+運用効率
まで含めて商品を選ぶ必要があります。
その結果として、法人ではインデックスファンドを運用することにしました。
法人版NISAで重要なのは「法人にいくら入れるか」
今回のスキームで重要なのは、退職金をすべて法人に入れることではありません。
法人に入れる金額は、法人で発生する運用益と、損金算入できる必要経費とのバランスで決めるべきです。
私の場合、2032年の定年退職後にマイクロ法人を設立し、自宅の一部を事務所として使用する予定です。
関連記事で検討したように、9.62㎡の事務所部分については、固定資産税、減価償却費、住宅ローン利息、火災共済などを按分することで、年間17~20万円程度の法人経費が発生する可能性があると見積もっています。
ここに法人のその他の必要経費が加われば、法人が毎年損金として計上できる金額はさらに増えます。
そこで、退職金のうち一定額を法人に役員借入金として貸し付け、その資金を運用することを考えています。
例えば、仮に法人の損金算入可能な必要経費が年間50万円だったとします。
この場合、法人の運用益が年間50万円程度までであれば、他の収益・費用を考慮しない単純なモデルでは、運用益と必要経費が相殺され、課税所得は発生しません。
逆に、運用益が100万円なら、50万円の経費を差し引いた残りが法人の所得計算に残ります。
つまり、法人に入れる資金を決める際には、「何%で運用できるか」だけでなく、「毎年いくらの損金を計上できる法人なのか」をセットで考える必要があります。
これが今回の「法人版NISA」という考え方の中心です。
もちろん、実際の法人税額は、運用益だけでなく、事業収入、その他の経費、法人住民税の均等割なども含めて決まります。
したがって、「経費と運用益が同額なら法人の税金がすべてゼロになる」という意味ではありません。
それでも、実際に発生する法人の必要経費によって、運用益に対応する課税所得を圧縮できるという基本構造は明確です。
法人版NISAは個人運用より本当に有利なのか?
ここまでの仕組みを数字にすると、メリットがイメージしやすくなります。
例えば、退職金から1,000万円を法人に役員借入金として貸し付け、法人がこれを運用するとします。
仮に年間の運用益を5%とすると、
1,000万円 × 5% = 50万円
です。
ここで法人の損金算入可能な必要経費が年間50万円あると仮定します。
単純化すると、
運用益50万円 − 必要経費50万円 = 課税所得0円
となります。
一方、運用益が100万円なら、
運用益100万円 − 必要経費50万円 = 所得50万円
となります。
このように、法人では投資収益と法人の必要経費を法人全体の所得計算の中で考えることができるのが大きな特徴です。
そして、法人に残った資産は、そのまま法人の資産として運用を継続できます。
さらに、法人から個人へ資金を戻す場合も、実際に法人へ貸し付けた役員借入金の元本を返済するのであれば、これは利益の配当や給与ではなく借入金の返済です。
したがって、適正な役員借入金の返済である限り、返済された元本は原則として個人の所得にはなりません。
ここが、このスキームのもう一つの重要なポイントです。
まとめ|「法人版NISA」は一つの資産運用戦略になる
今回検討したのは、
退職金をマイクロ法人に役員借入金として貸し付け、法人で資産運用する方法
です。
私の場合、自宅の9.62㎡を法人事務所として使用することで、事務所関連の必要経費について一定の見通しを持つことができました。
現在の条件をもとにした概算では、
その他の事務所関連経費:年間17~20万円程度
に加えて、
事務所家賃:年間24万円
を一つの候補として考えており、
年間41~44万円程度
の経費が発生する可能性があります。
このような必要経費が見えてきたことで、これまで保留していた「退職金をマイクロ法人に役員借入金として入れ、法人で資産運用する方法」を改めて検討する価値が出てきました。
退職金を法人に貸し付け、法人で運用し、実際に発生する必要経費を考慮しながら資産形成を行い、必要に応じて役員借入金を返済する
という仕組みによって、個人でそのまま運用する場合とは異なる資産運用の選択肢を作ることができます。
そして、私の場合は2032年の定年退職時に受け取る退職金が、このスキームの原資になります。
重要なのは、退職金を全額法人に入れることではありません。
法人で毎年どの程度の必要経費が発生するのかを把握し、その金額と運用益のバランスを考えて、法人に入れる金額を決めることです。
また、法人で運用する商品についても、個人の退職金ポートフォリオをそのままコピーするのではなく、税務・経理・決算まで含めて選ぶ必要があります。
私の場合、現時点では、
個人:インカム最大化を重視した退職金ポートフォリオ
法人:税引後の資産形成効率と経理負担を重視したインデックス運用
という役割分担が有力だと考えています。
したがって、「法人版NISA」は単なる節税テクニックではなく、退職金を個人と法人にどう配分し、それぞれでどのように運用するかという、定年後の資産設計の一部として考えるべきものだと思っています。




