はじめに|学資保険の思い出とジュニアNISAの失敗談
2027年から、いわゆる「こどもNISA」が始まる予定です。
子どもの将来のために非課税で資産形成ができる制度として、今後注目を集めることになるでしょう。
私自身、子どもの教育資金については、少し変わった経験をしています。
私が生まれた頃には、祖母が郵政の学資保険を掛けてくれました。
「昔(昭和)の学資保険は利息が良かった」と、成人してから聞いたことがあります。
この記憶があったので、私が親になったときには、上の2人の子どもについて、かんぽの学資保険を利用しました。
ところが、実際に利用してみると、昭和と平成では金利がまるで違うため、思っていたほどの利息が得られず、保険加入のメリットが感じませんでした。
そこで3人目の子どもについては、学資保険には加入せず、教育資金を普通口座で貯金していました。
制度的にも心理的にも資金拘束力の無い普通口座、ついつい生活資金に流用してしまい、教育資金残高は一進一退でした。
このままではいけないと思った時に知ったのが、ジュニアNISAです。
2021年、制度終了が近づいていた時期でしたが、遅ればせながらジュニアNISAを始めました。
ただし、3人目の子どもはすでに中学生。
大学進学まで、それほど長い時間が残されていませんでした。
そこで私は、当時人気のあった「レバナス」に投資しました。
そして翌2022年、レバナスは大暴落。
楽天証券では、保有商品の前日比が一定以上下落すると通知メールが届くサービスがあり、当時は「5%程度下落した」というメールが何度も届いていた記憶があります。
それでも私は、ドルコスト平均法を信じて積立を続けました。
いわゆる「ツミレバ」です。
結果的には、その後の相場回復によって、なんとか黒字まで戻すことができました。
さらに、USA360にも投資していました。
「債券を含む商品だから、レバナスよりは安定しているだろう」と考えていたのですが、こちらも2022年には大きく下落しました。
後から考えれば、USA360は債券を含む一方で、レバレッジを利用した商品です。
2022年の利上げショックでは株式も債券も下落したので、レバナスほどではないにしてもUSA360は暴落しました。
しかも、2023年以降の景気回復期になり、レバナスは1~2年程で黒字回復しましたが、USA360の黒字回復には数年間を要しました。
当時の私は、商品の設計思想や金利上昇時のリスクを十分に理解していなかったのでしょう。
もちろんツミレバによって2022年の下落相場で安価で多くの口数を購入できましたし、継続していれば黒字回復どころか、2026年現在に至るまでのNASDAQ100成長をレバレッジを掛けて得ることができたと思います。
しかし、「子どものための資産運用」は、高校や大学入学など、取崩し時期が決まっています。
私は銘柄選定のミスによってレバナスのマイナス面だけ満喫し、プラス面をほとんど得ることなく売却することになりました。
そして、子供資金特有の銘柄選定は、こどもNISAについても同じことが言えるのではないかと思っています。
こどもNISAは「長期投資だから株式」なのか?
資産運用の基本として、
長期・積立・分散
がよく言われます。
確かに、子どもの頃から投資を始めることには大きなメリットがあります。
0歳から始めれば、18歳まで約18年間あります。
このくらいの期間があれば、株式など値動きの大きい資産でも、短期的な価格変動をある程度乗り越えながら運用できる可能性があります。
しかし、ここで忘れてはいけないことがあります。
こどもNISAで運用するお金には、「使う時期」がある程度決まっているケースが多いことです。
例えば大学進学資金として使うのであれば、
0歳なら約18年
5歳なら約13年
10歳なら約8年
15歳なら約3年
しかありません。
同じ「こどもNISA」でも、子どもの年齢によって投資期間は大きく異なります。
つまり、
「こどもNISAだから何を買うか」ではなく、「いつ使うお金なのか」から逆算する必要があります。
こどもNISAでは「ターゲットイヤー」が重要
私は、こどもNISAの運用では「ターゲットイヤー」という考え方が重要になると思っています。
ターゲットイヤーとは、簡単にいえばその資金を使う予定の時期です。
例えば、大学進学資金として18歳頃に使うのであれば、18歳が一つのターゲットイヤーになります。
そうすると、運用戦略も自然に変わります。
0~10歳:成長を狙う時期
大学進学までまだ十分な時間があります。
この段階では、株式インデックスファンドなど、ある程度値動きの大きい資産を中心にして、長期的な成長を狙う考え方があります。
もちろん、元本保証ではありません。
しかし、使うまでの時間が長いのであれば、短期的な暴落を乗り越える余地があります。
10~15歳:リスクを落とし始める時期
大学進学までの期間が短くなってきます。
ここからは、単純に株式比率を維持するのではなく、徐々に価格変動リスクを落としていくことを検討します。
株式の比率を下げ、値動きの小さい資産や現金などを増やしていく方法です。
16~18歳:教育資金を守る時期
大学進学が目前になれば、事情はさらに変わります。
例えば大学入学金や初年度の授業料として使う予定のお金まで株式で運用し続けて、直前に大暴落してしまったら大変です。
ここまで来ると、
「どれだけ増えるか」より「必要なときに必要な金額を確保できるか」
の方が重要になります。
これは、若い人の老後資金運用とは大きく異なるところです。
私が2022年に学んだ「ターゲットイヤー」の重要性
私自身、ジュニアNISAでこの問題を身をもって経験しました。
2021年にジュニアNISAを始めたとき、3人目の子どもはすでに中学生でした。
ジュニアNISAの制度終了が近かったこともあり、「せっかくなら利用してみよう」と考えました。
当時人気だったレバナスを選び、積立を始めました。
ところが、2022年に相場が急落。
楽天証券から、保有商品が大きく下落したことを知らせるメールが何度も届きました。
精神的にはかなり大変でした。
それでも積立を続け、最終的には黒字まで回復しました。
この経験から学んだのは、
「暴落しても積立を続けられるか」と「そのお金をいつ使うのか」は別の問題
だということです。
長期投資なら、暴落しても待てる可能性があります。
しかし、大学入学まで3年しかないのであれば、株式市場が回復するまで待てるとは限りません。
結果的に私の場合は黒字回復できましたが、これは決して「レバナスなら大丈夫だった」という話ではありません。
むしろ、
必要な時期が決まっている資金に、どこまで価格変動リスクを取るのか
を考えるきっかけになった経験でした。
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「債券だから安全」でもないことを知った
もう一つ、2022年に印象に残ったのがUSA360です。
私は当時、USA360にも投資していました。
債券を含む商品なので、株式100%の商品よりも安定しているだろうと考えていました。
ところが、2022年にはこちらも大きく下落しました。
後から調べてみると、USA360は単純に「債券を持っているだけ」の商品ではありません。
レバレッジを利用して、株式と債券のエクスポージャーを大きくする設計です。
2022年は米国株が下落しただけでなく、急激な金利上昇によって債券価格も大きく下落しました。
そのため、
「株式+債券だから安心」
とはならなかったわけです。
当時の私は、商品の名前や大まかな特徴は知っていても、こうした設計の意味まで十分に理解していませんでした。
この経験から、こどもNISAで商品を選ぶ場合も、
「人気ファンドだから」
「インデックスファンドだから」
「信託報酬が低コストだから」
という理由だけで選ぶのではなく、その商品の値動きの仕組みまで理解する必要があると考えています。
こどもNISAの銘柄選びは「リターン」だけで決めない
こどもNISAの商品を選ぶとき、多くの人は、
S&P500
全世界株式
NASDAQ100
など、どの投資信託が一番大きなリターンが得られるかを考えるでしょう。
もちろん、それも重要です。
しかし、子どもの資金の場合、それだけでは不十分です。
私は、
「その商品がどれくらい増える可能性があるか」
だけでなく、
「ターゲットイヤー直前にどれくらい下落する可能性があるか」
を考えることが重要だと思います。
例えば、大学進学まで15年以上ある子どもと、大学まで3年しかない子どもでは、同じ商品でも意味が違います。
15年あるなら、暴落後の回復を待てる可能性があります。
しかし3年なら、回復を待てない可能性があります。
つまり、商品のリスクだけでなく、投資期間との組み合わせで考える必要があります。
銘柄入替ができるからこそ、年齢に応じた運用が重要になる
こどもNISAには、iDeCoのように保有している商品を別の商品に直接「スイッチング」する仕組みがありません。
一方で、NISAでは保有商品を売却すると、その商品の取得価額(簿価)に相当する非課税保有限度額を翌年以降に再利用できる仕組みがあります。
つまり、こどもNISAでも、
現在の商品を売却する
↓
翌年以降に復活した非課税保有限度額を利用する
↓
別の商品を購入する
という形で、時間をかけて銘柄を入れ替えていくことが考えられます。
これは、こどもNISAの運用を考えるうえで非常に重要なポイントだと思います。
例えば、0歳から大学進学資金を準備するとします。
最初の10年間は、株式インデックスファンドなどを中心に、長期的な成長を狙う。
しかし、子どもが10歳、12歳、15歳と成長し、大学進学という「使う時期」が近づいてきたら、株式の価格変動リスクを徐々に下げていく。
そして大学進学が目前になった段階では、数年以内に使う予定の資金について、預金などを含めて価格変動リスクの小さい資産へ移しておく。
このような「年齢に応じた銘柄入替」が、こどもNISAでは重要になるのではないでしょうか。
もちろん、売却した年に同じ金額をすぐ再投資できるわけではありません。復活した非課税保有限度額を利用できるのは翌年以降です。また、再利用できるのは売却額ではなく、原則として購入時の金額(簿価)です。
そのため、単純に「相場が上がったから売る」「下がったから買い直す」といった短期売買を繰り返す制度ではありません。
むしろ、
子どもの成長に合わせて、投資資産のリスクを少しずつ落としていく
という使い方の方が、こどもNISAには適しているのではないかと思います。
私自身、ジュニアNISAで3人目の子どもの教育資金を運用した際には、大学進学までの時間が短かったにもかかわらず、当時人気だったレバナスに投資しました。
そして2022年の大暴落を経験しました。
最終的には積立を続けて黒字まで回復しましたが、今振り返れば、「大学まであと何年あるのか」というターゲットイヤーをもっと強く意識しておくべきだったと思います。
こどもNISAでは、こうした経験を生かして、
子どもが小さい時期
→ 成長性を重視
大学進学が近づいた時期
→ 徐々にリスクを低下
大学進学直前
→ 必要資金を守る
というように、出口から逆算した運用を考えることが重要だと思います。
「こどもNISAで何を買うか」だけではなく、
「何歳になったら、どの程度リスクを落とすのか」
まで最初から考えておく。
これが、こどもNISAならではの運用戦略なのではないでしょうか。
こどもNISAは「ターゲット・イヤー型」で考えてみる
私なら、こどもNISAの運用を次のように考えます。
もちろん、これはあくまで一つの考え方です。
大学進学以外の目的なら、ターゲットイヤーも変わります。
例えば、中学生から高校生にかけての塾代であれば、この期間の複数年にわたって値動きの小さい資産を運用した方がいいかもしれません。
あるいは、成人後の独立資金として、売却期間を定めず自由に運用継続ということであれば、S&P500やオルカン等の「長期・積立・分散」が目的に合致しているかもしれません。
だからこそ、こどもNISAでは「何歳まで運用するか」ではなく「何のために、いつ使うお金なのか」を最初に決めることが大切だと思います。
若者の資産形成や老後資金とは、考え方が違う
ここが、こどもNISAの最も面白いところだと思います。
例えば20代の人が老後資金を作る場合、60~65歳まで40年近くあります。
多少の暴落が起きても、時間があります。
また、定年後の資産運用では、資産を一度に全部使うわけではありません。
20年、30年かけて取り崩していくこともできます。
ところが、こどもNISAで大学資金を作る場合は、
「18歳」という比較的明確なゴール
があります。
したがって、
若者の資産形成
→ 長期的な成長を重視
定年後の資産運用
→ 資産寿命とキャッシュフローを重視
こどもNISA
→ ターゲットイヤーと資金保全を重視
というように、同じ「資産運用」でも考え方が変わってきます。
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まとめ|こどもNISAは「出口から逆算するNISA」
こどもNISAは、子どもの将来のために長期間運用できる魅力的な制度になるでしょう。
しかし、
「子どものためのNISAだから、とにかく長期投資」
と考えるだけでは不十分だと思います。
大切なのは、
何のためのお金なのか
いつ使う予定なのか
その時期まであと何年あるのか
どこまで価格変動リスクを取れるのか
ターゲットイヤーが近づいたらどうするのか
を最初に考えることです。
特に教育資金として利用するなら、
「出口から逆算して運用する」
という発想が重要になります。
私自身、祖母から学資保険を掛けてもらい、親になってからは子どもの学資保険を利用し、その後は貯金、ジュニアNISA、そしてレバナスやUSA360まで経験しました。
その中で、2022年の暴落も経験しました。
振り返ってみると、これは単なる「投資で損をした・得をした」という経験ではありません。
「子どものためのお金を、どこまでリスクにさらしていいのか」
を考えるきっかけになった経験でした。
2027年から始まるこどもNISAでは、こうした経験を踏まえて、
「何を買うか」だけではなく、「いつまで運用するか」
を考えてみたいと思います。
こどもNISAは、子どものためのNISAであると同時に、
「ターゲットイヤーを意識して運用するNISA」
なのかもしれません。





